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第27話 新商品の売れ行き

 どん兵衛きつねうどんを発売してから一週間ほどが過ぎていた。

 新商品の導入ということで最初の数日は商会内も慌ただしかったが、最近はようやく落ち着きを取り戻しつつある。

 もちろん仕事が減ったわけではない。むしろ増えている。

 増え続ける取引先。

 増え続ける出荷量。

 増え続ける在庫管理。

 そして増え続ける【NISSIN】の生産数。

 モフク商会は今日も忙しかった。


 ◇◇◇


 朝。

 いつものようにスキルを確認する。


『生成可能商品:カップヌードル』


『生成可能商品:カップヌードル シーフード』


『生成可能商品:カップヌードル カレー』


『生成可能商品:どん兵衛 きつねうどん』


『本日の生成可能回数:2284/2284』


「二千二百八十四か」


 思わず苦笑する。

 二千を超えたと思ったら、もう二千二百を超えている。

 成長速度は相変わらず異常だった。

 最近は二十食入り箱で生成できるようになったため作業時間そのものは減った。

 しかし出荷量も同時に増えている。

 楽になったようでいて、結局忙しいことに変わりはなかった。


 ◇◇◇


 倉庫へ向かう。

 既にロイドが在庫確認をしていた。


「おはようございます」


「おはよう」


 帳簿を覗く。

 商品名ごとに綺麗に整理されていた。

 以前なら考えられない。

 ロイドとミーナを雇った効果は想像以上だった。


「どん兵衛の在庫が減ってますね」


「やっぱり?」


「はい」


 ロイドは頷く。


「先週よりかなり動いています」


 やはりそうか。

 最近の出荷記録を見てもどん兵衛の伸びは目立っていた。

 もちろんカップヌードルも売れている。

 シーフードもカレーも好調だ。

 だがどん兵衛はまた違う勢いを見せていた。


 ◇◇◇


 昼頃。

 商会へ一通の郵便が届いた。

 差出人はリックだった。


「東領からだ」


 封を開ける。

 中には報告書が数枚入っていた。

 内容を読み始める。


『どん兵衛の販売状況について報告します』


『初回納品分は予想以上の速度で売れています』


『試食会では特に年配客の反応が良好でした』


『これまでの商品よりより食べやすいという意見も多く見られます』


 俺は少し驚いた。

 年配客か。

 言われてみれば納得だった。

 ラーメンより優しい味。

 出汁の香り。

 太いうどん。

 前世でも人気商品だった理由の一つかもしれない。

 さらに読み進める。


『追加注文の要望が複数届いています』


『継続販売を希望する商会が増えています』


『どん兵衛単独で注文する商人も現れました』


「単独?」


 思わず呟く。

 予想以上だ。

 新商品のため最初は様子見になると思っていた。

 だが現実は違ったらしい。


 ◇◇◇


 数日後。

 今度はエマからも報告書が届いた。

 こちらも内容は似ていた。


『西領でも好評です』


『特に寒い日の売れ行きが良くなっています』


『温かい汁物として人気があります』


『カップヌードルとは別の商品として扱われています』


 俺は思わず笑った。

 試食会の時に話していた通りだった。

 競合ではない。

 代替品でもない。

 別の商品なのだ。

 だから売れる。

 だから注文も増える。

 単純な話だった。


 ◇◇◇


 その日の夕方。

 商会の会議室へ主要メンバーが集められた。

 父。

 ミーナ。

 ロイド。

 そして俺。


「どん兵衛の報告が来た」


 そう言うと全員が注目する。


「売れてる?」


 父が聞いた。


「かなり」


 俺は報告書を見せる。

 ミーナが目を通し、驚いた顔になった。


「思った以上ですね」


「だよね」


 ロイドも頷く。


「追加注文の数も増えています」


「割合を変えた方がいいかもしれません」


 その意見には全員が賛成だった。


 ◇◇◇


 現在の生産割合は、

 しょうゆ四十%。

 シーフード二十五%。

 カレー二十五%。

 どん兵衛十%。

 だった。


「どうする?」


 俺が尋ねる。

 ミーナが帳簿を開いた。


「どん兵衛を二十%まで増やしても問題ありません」


「倍か」


「はい」


 現在の売上を見る限り十分消化できます」

 父も頷く。


「試してみる価値はあるな」


「だね」


 俺も同意した。

 せっかく売れているのだ。

 供給を増やさない理由はない。

 協議の結果、 

 しょうゆ三十%。

 シーフード二十五%。

 カレー二十五%。

 どん兵衛二十%。

 という割合になった。


 ◇◇◇


 夜。

 一人で帳簿を眺める。

 新規契約。

 新規注文。

 増え続ける売上。

 そして成長するスキル。

 商会を立ち上げてからまだ一年も経っていない。

 それなのに状況は大きく変わった。

 村の農家だった頃。

 まさか他領と取引する商会を運営することになるとは思わなかった。

 もちろん全て順調というわけではない。

 考えることは増え続けている。

 従業員も増えた。

 取引先も増えた。

 倉庫も増やさなければならないかもしれない。

 だが不思議と嫌ではなかった。

 むしろ楽しい。

 前世では味わえなかった感覚だった。


 ◇◇◇


 翌朝。


 再びスキルを確認する。


『生成可能商品:カップヌードル』


『生成可能商品:カップヌードル シーフード』


『生成可能商品:カップヌードル カレー』


『生成可能商品:どん兵衛 きつねうどん』


『本日の生成可能回数:2307/2307』


「また増えてる」


 思わず笑う。

 二千三百個台。

 どこまで増えるのかは分からない。

 だが一つだけ確かなことがある。

 どん兵衛は成功した。

 販路は広がり続けている。

 モフク商会も成長を続けている。

 そして【NISSIN】もまた、次の段階へ向かって進み続けていた。


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