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第18話 物件探し

 翌朝。


『生成可能商品:カップヌードル』


『本日の生成可能回数:130/130』


「百三十個か」


 昨日の百二十個からさらに増えている。

 最近は一日に十個前後増えることも珍しくなくなった。

 もう増えること自体には驚かない。

 問題は、その増え続ける商品をどう扱うかだ。

 そして、その答えを探すために今日は町へ向かうことになっていた。


◇◇◇


「本当に行くのか」


 荷物をまとめながら父が言う。


「昨日、自分で決めたじゃないか」


「決めたが、早いなと思ってな」


 父は苦笑した。

 昨日の家族会議で町への移住と商会設立に向けて動くことが決まった。

 だったら早い方がいい。

 カップヌードルの数は待ってくれないのだから。


「まずは話を聞くだけだよ」


「まあな」


 父も頷く。

 今日は俺一人ではない。

 父も一緒だ。

 商会を作るなら後見人が必要になる。

 どうせなら最初から一緒に話を聞いた方が早い。


◇◇◇


 昼前。

 俺と父は町へ到着した。

 そしてそのままベルク商会へ向かう。

 入口の従業員もすでに俺の顔を覚えていた。


「モフク様」


「こんにちは」


「本日は?」


「ハリーさんに相談です」


「少々お待ちください」


 従業員はすぐに奥へ向かった。

 しばらくして戻ってくる。


「どうぞ」


◇◇◇


 応接室へ案内されると、ほどなくして扉が開いた。


「これはこれは」


 ハリーだった。


「今日はお父上もご一緒ですか」


「こんにちは」


 父が軽く頭を下げる。


「モフクの父です」


「お会いできて光栄です」


 ハリーも丁寧に頭を下げた。

 副会頭という立場だが、偉そうなところはない。


◇◇◇


「それで、本日は?」


 席に着くなりハリーが尋ねる。

 俺は昨日の家族会議の結果を説明した。

 町への移住。

 商会設立。

 そのための準備。

 そして。


「家と倉庫を探したいんです」


 ハリーは静かに頷いた。

 まるで予想していたかのようだった。


◇◇◇


「まず結論から言いましょう」


 ハリーが指を組む。


「家より先に倉庫です」


「そうなんですか」


「当然です」


 即答だった。


「商会は商品がなければ始まりません」


「はい」


「そして商品があっても置く場所がなければ始まりません」


 それもその通りだった。

 住む場所も大事だ。

 だが商売の視点なら倉庫の方が先になる。


◇◇◇


「ただし」


 ハリーは少し笑った。


「必ずしも別々に考える必要はありません」


「別々じゃない?」


「ええ」


 そう言って机の引き出しから数枚の紙を取り出した。


「実は空き物件がいくつかありまして」


 父と俺は顔を見合わせる。


「そんなものまで扱ってるんですか?」


「商人ですから」


 ハリーは当然のように答えた。


◇◇◇


 一枚目。


「こちらは倉庫のみ」


 二枚目。


「こちらは小店舗付き倉庫」


 三枚目。


「こちらは元商店ですね」


 俺は紙を眺める。

 正直、素人にはよく分からない。

 だがハリーは慣れた様子で説明を続ける。


◇◇◇


「私のお勧めはこちらです」


 三枚目の紙だった。


「元商店?」


「ええ」


 ハリーが頷く。


「一階が店舗」


「はい」


「奥が倉庫」


「ほう」


 父が反応する。


「そして二階が住居です」


「住めるんですか?」


「住めます」


 俺は思わず身を乗り出した。


「つまり」


 ハリーが整理する。


「商会」


「はい」


「倉庫」


「はい」


「住居」


「はい」


「全て一つで済みます」


 確かに。

 それはかなり魅力的だった。

 商会を作るなら店舗は必要になる。

 商品を置く倉庫も必要になる。

 家族が住む家も必要になる。

 それが一つにまとまっている。


◇◇◇


「なぜ空いているんですか?」


 父が尋ねた。

 当然の疑問だった。

 そんな便利な場所なら誰かが使っていそうだ。


「つい最近元の店主が引退したからです」


 ハリーが答える。


「子供も継がず、そのまま閉めました」


「なるほど」


「建物自体は問題ありません」


 父は腕を組みながら考えている。

 俺も同じだった。

 かなり条件が良い。

 良すぎるくらいだ。


「実際に見てみますか?」


 ハリーが言った。


「見られるんですか?」


「もちろんです」


 そう言って立ち上がる。


「物件は見てから決めるものです」


 確かにその通りだ。

 前世でも家の写真だけで決める人は少ないだろう。


◇◇◇


 しばらく歩く。

 商業区の一角だった。

 大通りから少し離れているが、人通りは十分ある。


「ここです」


 ハリーが立ち止まった。

 俺は目の前の建物を見上げる。

 二階建て。

 それなりに大きい。

 看板は外されているが、以前は店だったことが分かる。


「思ったより立派ですね」


「そうでしょう」


 ハリーが笑う。

 中へ入る。

 一階は広かった。

 商品を並べる棚。

 接客用の空間。

 そして奥には倉庫。

 想像していたよりずっと大きい。


「カップヌードルなら十分置けそうですね」


「十分どころではありません」


 ハリーが笑う。


「今の生産量なら数日分まとめて保管できます」


◇◇◇


 続いて二階へ上がる。

 居間。

 寝室。

 台所。

 家族四人で住むには十分な広さだった。


「アリアが喜びそうだな」


 父が呟く。

 それには同意だった。

 あの性格なら間違いなく喜ぶ。


◇◇◇


 一通り見終わった後。

 俺と父は窓から町並みを眺めていた。

 商人たちが歩いている。

 荷車が行き交っている。

 村とは違う景色だ。


「どうですか?」


 ハリーが尋ねる。

 俺は父を見る。

 父も俺を見る。

 そして。


「悪くないな」


 父が言った。


「うん」


 俺も頷く。

 まだ契約はしていない。

 金額も聞いていない。

 決めることはたくさんある。

 それでも。

 商会の姿が少しだけ現実味を帯びてきた気がした。

 ――次は、この物件を借りられるかどうかだ。


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