第十五話 舞踏会に犯人がいる? ツンツン姫と潜入捜査!
今夜、王城では舞踏会が開かれる。
しかも――王女殿下が犯人の標的になっている可能性がある。
「つまり、舞踏会に犯人が来るかもしれないんですね?」
私は王子に確認した。
「ああ」
王女は腕を組み、ツンと顔を上げる。
「ならば、私が囮になりますわ」
「危険すぎます」
公爵様が即座に反対した。
「私は王女です。危険から逃げていては、王族の名が泣きますわ!」
「それとこれとは――」
「まあ、公爵様」
王女がニヤリと笑う。
「もしかして、私が怖いのですか?」
「……」
「図星?」
「違います」
「では、決まりですわね!」
王女は勝ち誇った。
私は小さくため息をつく。
「でも、犯人をどうやって見つけるんですか?」
すると私は、あることを思いついた。
「……物たちに協力してもらえば?」
「物に?」
「はい」
舞踏会場には、グラス、食器、シャンデリア、鏡、花瓶……。
証人だらけだ。
王子が笑う。
「なるほど。今夜の舞踏会は、ミヤにとっては巨大な捜査現場というわけか」
「そういうことです!」
王女も少し興味を持ったらしい。
「では、私も協力しますわ」
「ありがとうございます」
「ただし――」
王女が私の耳元に顔を近づける。
「お兄様があなたに夢中かどうかも、ついでに調べます」
「それは調べなくていいです!」
夜。
舞踏会が始まった。
煌びやかなドレス。
美しい音楽。
大勢の貴族たち。
私はメイド服のまま、会場の隅に立っていた。
『ミヤ!』
テーブルのグラスが叫ぶ。
『さっきから怪しい人が三人いる!』
「三人も!?」
『一人目、赤いネクタイ!』
『二人目、白い仮面!』
『三人目――』
グラスが突然黙った。
「どうしたの?」
『……あの人』
「誰?」
『公爵様の後ろにいる人』
私は振り返る。
公爵様は王子と話をしている。
その後ろに、一人の男性。
黒い服。
左足を少し引きずっている。
「……!」
昨日の証言と一致する。
私はすぐに公爵様へ近づいた。
「公爵様!」
「どうした?」
「あの人です」
公爵様が振り返る。
しかし――
「いない?」
男は消えていた。
「そんな……」
私は周囲を見る。
すると、床の絨毯が叫んだ。
『こっち!』
「え?」
『男は王女様の方へ行った!』
「王女殿下!」
私は走り出した。
王女は大勢の貴族に囲まれている。
その手には――赤い髪飾り。
私は叫ぶ。
「王女殿下! その髪飾りを外してください!」
「え?」
『早く!』
髪飾り自身が震えている。
『あの人が来る!』
王女は迷った。
だが――
「分かりましたわ!」
髪飾りを外す。
その瞬間。
会場のシャンデリアが――
『来る!』
バチッ!!
明かりが消えた。
「きゃあ!」
会場が騒然となる。
真っ暗闇。
私は王女の手を握った。
「こちらです!」
「ミヤ!」
そのとき――
耳元で誰かが囁いた。
「……見つけた」
「!」
振り返る。
誰もいない。
でも――
私の手の中には、いつの間にか一枚の黒いカードが握られていた。
そこには一言だけ。
『次は、お前だ』
「……!」
王女が青ざめる。
その直後、明かりが戻った。
会場には何事もなかったように人々が立っている。
しかし、公爵様だけはすぐに私のところへ来た。
「ミヤ!」
「公爵様……」
公爵様は私の無事を確認すると、黒いカードを見た。
そして――
今まで見たことがないほど険しい顔になる。
「これは……」
「知っているんですか?」
「……昔、私に送られてきたものと同じだ」
「え?」
公爵様はカードを握りしめる。
「私がまだ幼かった頃にも、一度だけ見た」
王子が近づく。
「つまり、五百年前の事件と現在の犯人は――」
「つながっている」
公爵様が答えた。
すると突然。
王女のティアラが叫んだ。
『違うわ!』
「え?」
『これは犯人からの挑戦状じゃない!』
「どういうこと?」
『これは――』
ティアラが震える。
『助けを求める手紙よ!』
「……!」
会場の空気が凍った。
私は黒いカードを裏返す。
すると、表にはなかった小さな文字が浮かび上がっていた。
『犯人を追うな。犯人に追われている者を探せ』
王子が呟く。
「……どういう意味だ?」
私は会場を見渡した。
そして気づいた。
舞踏会にいるはずの一人が――
消えている。
「公爵様……」
「何だ?」
「一人、いません」
「誰が?」
私は震える声で答えた。
「公爵家の使用人です」
その瞬間。
遠くの花瓶が叫んだ。
『ミヤ!』
「はい!」
『その人、さっき――』
花瓶が言葉を止める。
『……王城の地下へ行ったわ』
私は息を呑んだ。
事件は、また地下へつながっていた。




