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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第90話:商人ラザール

王都の商業区。


巨大な石造りの建物の最上階。


そこは王国最大級の商会――ラザール商会の執務室だった。


机の上には地図、契約書、貨幣袋。

そして各地から集められた報告書が山のように積まれている。


その中心に座る男。


ラザール。


年齢は四十前後。

整えられた黒髪に、鋭い灰色の瞳。


王都の商人たちの間では有名な男だった。


「王族より金を動かす男」


そう噂されるほどに。


ラザールは一枚の報告書を眺めていた。


そこには、簡潔な文字で書かれている。


辺境の村にて水浄化魔法具を確認。

製作者:レオン(村人)。


ラザールは無言のまま紙をめくる。


次の報告。


農具の改良あり。

作業効率三倍。


さらに次。


簡易魔法設備を村人が運用。


ラザールは椅子にもたれた。


指で机を軽く叩く。


トン。

トン。


部屋には秘書だけが立っている。


「……噂レベルです」


秘書が慎重に言った。


「辺境の行商人の話ですので」


「信頼性は――」


ラザールは静かに笑った。


「十分だ」


秘書が少し驚く。


「ですが」


ラザールは窓の外を見る。


王都。


巨大な城。

整然とした街並み。

そして――停滞した空気。


「今の王国で」


「技術の話が出る場所は少ない」


机の報告書を指で叩く。


「魔法設備は故障」


「農業は不作」


「研究院は停滞」


ラザールは呟いた。


「つまり」


「技術が止まっている」


秘書が黙る。


ラザールは報告書の名前をもう一度見る。


レオン


その名前。


ラザールの口元がわずかに上がる。


「だが」


「辺境の村で技術が生まれている」


指で地図をなぞる。


王都から遠く離れた、名もない辺境。


「普通はありえない」


秘書が言う。


「詐欺の可能性も」


ラザールは笑った。


「もちろんある」


そして続ける。


「だが」


「もし本当なら?」


沈黙。


秘書は答えない。


ラザールが自分で言う。


「国が変わる」


窓の外の王城を見る。


「いや」


「もう変わり始めているのかもしれない」


彼はゆっくり立ち上がった。


コートを羽織る。


秘書が驚く。


「旦那様?」


ラザールは簡単に言った。


「行くぞ」


「どちらへ?」


ラザールは笑う。


商人の笑顔。


利益を見つけた時の顔だった。


「辺境だ」


秘書がさらに驚く。


「ご本人がですか?」


「もちろん」


ラザールは扉へ歩く。


「面白い話は」


振り返る。


「自分の目で見る主義でね」


そして静かに言った。


「レオン、か」


その名前を味わうように。


「会ってみたい」


廊下の向こうで、使用人たちが慌ただしく動き始める。


巨大商会の主が動いた。


それはつまり――


商業の流れが動くということだった。


ラザールは軽く呟く。


「さて」


「どんな男だ?」


その問いの答えはまだ誰も知らない。


だが。


王国最大の商人が今、辺境へ向かおうとしていた。

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