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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第88話:辺境の発明

辺境の村の朝。


まだ霧が残る川辺に、数人の村人が集まっていた。


木の箱のようなものが、川の縁に置かれている。


大きさは両手で抱えられる程度。

側面には簡単な魔法陣が刻まれていた。


村人の一人が不安そうに聞く。


「レオンさん……本当にこれで大丈夫なんですか?」


装置の横でしゃがんでいたレオンは、工具を置いた。


「大丈夫だ」


あっさりした声だった。


村人たちは顔を見合わせる。


「でも……川の水をそのまま飲めるようにするって……」


「そんな魔法具、聞いたことないですよ」


別の村人も頷く。


「王都でも高級品だって……」


レオンは肩をすくめた。


「別に大したもんじゃない」


装置の上部に小さな水口がある。


そこから木の桶に水が流れ落ちていた。


透明だった。


澄んだ水。


村人の一人が恐る恐る手を入れる。


「……冷たい」


別の男が言う。


「飲んでみろよ」


「いやお前が飲めよ」


「レオンさんが飲んでないだろ」


そんな小さな押し付け合いが始まる。


レオンは呆れた顔をした。


そして桶を持ち上げる。


ごくり。


一口飲んだ。


「ほら」


普通の顔で言う。


「問題ない」


それを見た村人たちの緊張が一気に解けた。


一人が水をすくう。


ごくり。


そして。


「……うまい」


目を丸くした。


「え、ほんとだ」


「川の水の匂いがない」


「すげえ……」


次々と飲み始める。


歓声が上がる。


「これなら井戸いらないじゃないか!」


「病気も減るぞ!」


「旅人にも出せる!」


小さな川辺が、急に賑やかになった。


子供たちまで集まってくる。


「なにそれー!」


「水!」


「すごい!」


レオンはその様子を少し離れて見ていた。


特別なことをした感覚はない。


ただ。


前の世界で当たり前に使われていた技術を、少し簡略化しただけだ。


魔法陣も単純。


魔力消費も少ない。


王都なら研究院の新人でも作れる。


……はずだった。


村人の一人が興奮して聞く。


「レオンさん!」


「これどうやって作ったんです!?」


レオンは答える。


「濾過して、浄化してるだけだ」


「魔法陣で不純物を分解してる」


村人はぽかんとする。


「……?」


「いや、だから」


レオンは装置を指差した。


「ここで水を通して」


「ここで魔力流して」


「終わり」


沈黙。


村人たちは顔を見合わせる。


「……さっぱり分からん」


「俺もだ」


レオンは首を傾げた。


「そんな難しいか?」


全員が一斉に言った。


「難しいです!!」


川辺に笑い声が広がった。


子供が桶を抱えて走る。


「母ちゃん!水きれい!」


遠くから声が返る。


「走るなこぼす!」


その光景を見て、レオンは小さく息を吐いた。


別に。


大したことじゃない。


ただ。


生活が少し楽になるだけだ。


それでいい。


レオンは工具を拾い上げる。


「あと二台作るか」


村人が目を輝かせた。


「え!?増やすんですか!」


「川の上流にも置いた方がいいだろ」


「あと家畜用」


村人たちはざわつく。


「神様かこの人……」


「いやほんとに」


レオンは聞こえないふりをした。


ただの装置だ。


ただの生活改善。


それだけのことだった。

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