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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第57話:釣り回

 朝。


 レオンは、

 釣り糸を垂らしていた。


 川は、静かだった。

 流れは緩やかで、

 水面は光を反射している。


 餌は、

 昨夜の残り。


 竿は、

 拾った枝。


 特別な道具はない。


 隣には、

 セラが座っている。


 剣は置いてきたらしい。


 リィナは、

 少し離れた場所で、

 石を積んでいる。


 エルナは来ていない。

 帳面仕事だ。


 ――会話は、ない。


 風が、

 草を揺らす音。


 水が、

 石に当たる音。


 それだけ。


 時間は、

 ゆっくり流れていた。


(……昔なら、

 耐えられなかったな)


 レオンは、

 ふと思う。


 何も起きない時間。

 成果のない時間。


 以前の世界では、

 それは「無駄」だった。


 今は――

 違う。


 釣り糸が、

 微かに揺れる。


 だが、

 引かない。


 そのまま、

 放っておく。


 セラも、

 何も言わない。


 剣を握る手より、

 今の手の方が、

 ずっと楽だった。


 昼近く。


 結局、

 魚は一匹もかからなかった。


 リィナが、

 小さく首を傾げる。


「……失敗、ですか?」


「どうだろうな」


 レオンは、

 糸を巻きながら答える。


「腹は減ってない」


「怒られてない」


「時間も、

 奪われてない」


 セラが、

 少し笑った。


「じゃあ、成功だな」


 川辺を離れる。


 手ぶら。


 だが、

 誰も気にしていない。


 成果を求めない。

 理由を求めない。


 ただ、

 そこにいた。


 午後。


 村に戻ると、

 誰かが別の仕事をしている。


 畑を耕す音。

 木を削る音。


 レオンは、

 釣り竿を壁に立てかけた。


(……また、

 行くか)


 何も起きなかった。


 だからこそ、

 良かった。


 この世界には、

 何も起きなくていい日が、

 確かに存在していた。


 それを、

 釣れなかった魚が、

 静かに証明していた。

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