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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第48話:畑が増える

 朝、レオンが外に出ると、

 畑の端が、少しだけ広がっていた。


 昨日まで、

 手をつけていなかった場所。


 石が多く、

 土も固い。


 レオンは、足を止めた。


 リィナが、そこにいた。


 黙々と、

 小さな手で石を拾い、

 端に積んでいる。


 誰にも頼まれていない。

 指示もない。


 それでも――

 止められてもいない。


 レオンは、何も言わず、

 隣にしゃがみ込んだ。


 石を一つ、どける。


 リィナは、ちらりとこちらを見て、

 何も言わずに、作業を続ける。


 しばらくして、

 セラもやってきた。


「……増えたな」


「うん」


 それだけ。


 セラは、剣を置き、

 短時間だけ、土を崩すのを手伝う。


 剣士の腕力は、

 畑仕事にも、意外と役に立った。


 昼前には、

 畑が一段、広がっていた。


 劇的な変化じゃない。

 収穫が増える保証もない。


 それでも――

 「できる範囲」が、確かに増えた。


 昼食は、いつもより早く用意できた。


 水汲みも、

 薪割りも、

 一人でやるより、楽だった。


 レオンは、ふと思う。


(人手が増えるって、

 こういうことか)


 効率が上がる。

 負担が減る。


 だがそれ以上に――

 「無理をしなくていい」時間が、

 少しだけ増える。


 午後。


 レオンは、畑の端に立ち、

 広がった土地を見る。


 リィナは、少し離れたところで、

 手を止め、空を見上げていた。


 その表情は、

 相変わらず控えめだ。


 だが、

 怯えきった顔ではない。


 セラが、ぽつりと言う。


「生活、楽になったな」


「少しだけ」


 レオンは答える。


 少し、でいい。


 無理に増やさなくていい。


 夜。


 焚き火を囲みながら、

 三人で食事をする。


 量は変わらない。

 味も、いつも通り。


 それでも――

 作る手間が減った分、

 心に、余裕があった。


 リィナは、スープを飲みながら、

 ほんの一瞬、顔を上げる。


 目が合いそうになって、

 すぐに逸らす。


 だが、

 口元は、少しだけ緩んでいた。


 畑が増えた。


 生活が、楽になった。


 それは、

 誰かが「役に立った」結果ではない。


 ただ――

 一緒に生きている、

 その結果だった。

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