第47話:三人の生活
朝は、静かに始まる。
レオンが水を汲み、
セラが周囲を見回り、
リィナは焚き火のそばに座る。
役割は、決めていない。
それぞれが、
できることを、
できる範囲でやっている。
会話は、少ない。
「今日は曇りだな」
セラが、空を見て言う。
「雨は降らない」
レオンが答える。
それだけで、話は終わる。
リィナは、二人のやり取りを聞きながら、
黙ってスープを飲む。
昼。
畑の作業は、相変わらず成果が薄い。
石をどけても、土は痩せている。
セラは手伝わない。
剣士に畑仕事を頼まれないことが、
彼女にとっては、むしろ楽だった。
リィナは、少し離れた場所で、
雑草を抜いてみる。
頼まれていない。
だが、止められてもいない。
レオンは、気づいているが、
何も言わない。
午後、
セラは刃を研ぎ、
レオンは家を直し、
リィナは洗った布を干す。
誰も、指示を出さない。
だが、
作業は、不思議とぶつからない。
夕方。
焚き火を囲む。
食事の準備も、
自然に分担されていた。
リィナが水を運び、
レオンが火を管理し、
セラが周囲を警戒する。
誰が決めたわけでもない。
食事中、
リィナの表情は、
やはり少し緩んでいる。
セラは、何も言わない。
指摘もしない。
夜。
焚き火の火が落ち着く頃、
セラがぽつりと言った。
「……悪くないな」
何が、とは言わない。
レオンは、頷いた。
「うん」
それだけ。
リィナは、二人の様子を見て、
胸の奥が、少し温かくなる。
(……ここにいて、
いいのかもしれない)
まだ、確信はない。
自由は、まだ怖い。
それでも――
この三人の生活は、
静かで、
息がしやすかった。
会話は少ない。
だが、空気は、悪くない。
それだけで、
十分な一日だった。




