第112話:魔導インフラ
グレイウッド。
夜。
かつてこの時間、街は暗かった。
ランプの火だけが頼り。
人々は早く家に戻り、通りは静かになる。
だが今は違う。
通りの柱。
そこに設置された小さな魔導具が光っていた。
魔導灯。
柔らかい光が街を照らす。
一定の間隔で並ぶ光。
通りは昼のように明るい。
子どもが走る。
商人がまだ店を開いている。
夜でも街が動いていた。
獣人の男が感心して言う。
「すげえな」
横にいた魔族がうなずく。
「魔力消費も少ない」
人間の商人が笑う。
「レオン設計だ」
三人は同時に言った。
「やっぱりか」
通りの下。
地面の中では水が流れていた。
太い管。
細い管。
街中に張り巡らされた水路。
上下水道。
家の蛇口をひねる。
水が出る。
使った水はまた別の管へ流れる。
街の外で浄化される。
魔族の女性が驚く。
「魔族領でもここまでない」
人間の主婦が笑う。
「便利よ」
洗濯が早い。
料理が楽。
病気も減る。
生活が変わっていた。
街の外。
専用道路。
荷車が並んでいる。
だが普通の荷車ではない。
車輪の横に魔法陣が刻まれている。
「準備いいか?」
商人が声を上げる。
荷車に魔力を流す。
すると。
スーッ
荷車が軽く動いた。
重い荷物なのに。
押す力がほとんどいらない。
物流魔法。
獣人の運搬人が驚く。
「軽い!」
商人が笑う。
「魔導補助だ」
普通の半分の力で荷物を運べる。
速度も早い。
だから。
交易量が増えた。
丘の上。
ラザールが街を見ていた。
夜の光。
整った通り。
動く荷車。
彼は小さく息を吐く。
「完成したな」
横にいたセラが言う。
「何が」
ラザールは街を指差す。
「街の骨格だ」
魔導灯。
上下水道。
物流魔法。
都市に必要な基盤。
インフラ。
それがすべて整った。
普通の国なら。
何十年もかかる。
だがここでは。
数年。
ラザールは笑う。
「本当にやばい街だ」
その頃。
レオンは工房にいた。
工具を持っている。
机の上には新しい設計図。
セラが聞く。
「何作ってる」
レオン
「発電」
セラ
「は?」
レオンは説明する。
「魔力」
「集める」
「街に送る」
セラは沈黙した。
そして言う。
「……まだ進化するの?」
レオンは普通の顔で言った。
「便利になる」
それだけだった。
外では街の灯りが輝いている。
グレイウッド。
その都市は今――
魔導インフラ都市として完成しつつあった。




