第111話:街の拡張
グレイウッドの中央広場。
朝から人が集まっていた。
商人。
職人。
獣人。
魔族。
そして屋根の上には竜族。
皆の視線は一つの机に向いている。
机の上には――
地図。
街の地図だった。
だが、ただの地図ではない。
びっしりと線が引かれ、数字が書かれている。
水路。
道路。
市場。
住宅区。
細かく計算された都市計画図だった。
ラザールが腕を組む。
「……これ全部?」
セラが答える。
「レオン」
ラザールは深く息を吐いた。
「やっぱりか」
レオンは机の横に立っていた。
特に緊張している様子はない。
普通の顔。
セラが言う。
「説明して」
レオンは地図を指差す。
「ここ」
現在の市場。
「広げる」
商人たちが頷く。
今の市場はもう狭い。
人が多すぎる。
レオンは続ける。
「この通り」
一本の線。
「物流用」
ラザールが目を細める。
「専用道路か」
レオン
「うん」
荷車が通る道。
人の通りと分ける。
それだけで流れは倍になる。
商人たちがざわつく。
「確かに早い」
「渋滞なくなる」
レオンはさらに指す。
「ここ」
住宅区。
「種族ごとじゃない」
セラ
「混在?」
レオン
「うん」
人間の隣に獣人。
その隣に魔族。
理由は単純だった。
「仕事近い」
通勤時間を減らす。
それだけ。
ラザールは笑う。
「発想が商人だな」
レオンは次の線を指す。
「水路」
街の中心から外へ広がる青い線。
浄水魔導具と連動した給水網。
どこでも水が使える。
獣人の農民が驚く。
「畑まで来るのか?」
レオン
「来る」
「収穫増える」
農民たちがざわめく。
竜族の青年が屋根の上から覗く。
「なあ」
レオンを見る。
「これ」
指で街をなぞる。
「全部考えたの?」
レオン
「うん」
竜族は笑った。
「やっぱりやばいな」
ラザールは地図を見つめる。
道路。
水路。
住宅。
市場。
全部が無駄なく配置されている。
偶然ではない。
計算されている。
人の流れ。
物流。
生活。
全部だ。
ラザールは小さく呟いた。
「……効率都市」
セラが聞く。
「何それ」
ラザールは答える。
「無駄がない都市だ」
普通の街は成長すると歪む。
道が曲がる。
市場が詰まる。
水が足りない。
だがこの街は違う。
最初から。
設計されている。
ラザールは笑った。
「とんでもないな」
レオンは地図を見ながら言う。
「あと」
皆が見る。
レオンは街の外を指差した。
空白の土地。
「ここ」
少し考える。
「工業区」
沈黙。
ラザールがゆっくり笑う。
「……本気か」
レオン
「うん」
グレイウッドはまだ成長途中。
だが。
その設計図はすでに――
都市の未来を描いていた。




