第109話:レオンの日常
グレイウッドの朝。
太陽がゆっくり昇る。
街の通りにはすでに人が動いていた。
市場の準備。
荷車の移動。
パンの香り。
多種族都市となったこの街は、朝から賑やかだ。
だが。
街の外れでは――
静かな時間が流れていた。
畑。
レオンはスコップを持って土を掘っていた。
隣では狼獣人の男が鍬を振るう。
「水路、ここでいいのか?」
レオン
「うん」
短い返事。
獣人は土を見ながら言う。
「この土地、前より作物育つな」
レオンはうなずく。
「土改良した」
「いつ?」
「昨日」
獣人は手を止める。
「昨日?」
レオン
「夜」
獣人は笑った。
「寝てないのか?」
レオン
「寝た」
普通の顔。
獣人は肩をすくめた。
昼。
畑仕事が終わる。
レオンは草の上に寝転がった。
空。
青い。
風が吹く。
遠くで市場の声が聞こえる。
屋根の上では竜族の青年が昼寝している。
その影がゆっくり動く。
レオンは目を閉じる。
「……平和」
そのまま。
昼寝。
一時間後。
レオンは起き上がった。
ポケットから小さな紙を出す。
そこには魔法陣のメモ。
「そういえば」
立ち上がる。
畑の横に小さな装置を置く。
金属の箱。
魔法陣を刻む。
カチッ。
魔力を流す。
すると。
土の中から細い管が伸びた。
水が出る。
一定のリズムで。
獣人が戻ってきて驚く。
「何だそれ」
レオン
「自動水やり」
獣人
「いつ作った」
レオン
「今」
獣人は頭を抱える。
「今!?」
レオンは畑を見る。
水が均等に流れる。
無駄がない。
「これで」
少し考える。
「収穫増える」
獣人は呆れた顔をした。
「お前さ……」
レオン
「何」
獣人は笑う。
「世界変えてる自覚ある?」
レオンは首を傾げた。
「ない」
それは本心だった。
彼にとってはただの生活改善。
畑が楽になる。
水やりが楽になる。
それだけ。
夕方。
街の灯りがつく。
市場では今日も人が笑っている。
人間。
獣人。
魔族。
竜族。
様々な種族が暮らす街。
その中心人物は。
今。
工房で何か作っていた。
レオンは呟く。
「次は」
紙に魔法陣を書く。
「運搬装置」
荷物が勝手に動く装置。
作れそうだった。
外では子どもが笑う。
街は成長している。
だが。
レオンの日常は変わらない。
畑。
昼寝。
そして。
発明。
それが彼の毎日だった。




