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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第105話:多種族都市

グレイウッドの朝。


市場の鐘が鳴る。


カン、カン、カン。


それを合図に、人が動き始める。


パン屋の煙。

荷車の音。

子どもの笑い声。


だが、ここにいるのは――


人間だけではない。


市場の入口では、狼の耳を持つ獣人が肉を並べていた。


「新鮮だぞ!」


尾を揺らしながら客を呼ぶ。


買いに来たのは人間の主婦。


「ちょっと安くならない?」


獣人は笑う。


「じゃあ銀貨半分」


普通の会話。


普通の商売。


だが王国では、まず見られない光景だった。


通りの反対側。


黒いマントの魔族が、浄水魔導具を手に取っていた。


「……便利だな」


店主が言う。


「壊れないぞ」


魔族はうなずく。


「魔族領でも売れそうだ」


横で聞いていた商人が飛びつく。


「取引しないか?」


交渉が始まる。


周囲の人間は気にしない。


もう慣れていた。


さらに上空。


屋根の上。


青年が寝転がっていた。


竜族だ。


黒髪の青年はあくびをする。


「平和だな」


隣の煙突から煙が出る。


人間の家。


その屋根で竜族が昼寝している。


普通ならありえない。


だがこの街では、誰も文句を言わない。


通りの中心。


ラザールが腕を組んで立っていた。


商人の目で街を見る。


人間。

獣人。

魔族。

竜族。


全部いる。


彼は小さく笑った。


「……本当にやるとは」


秘書が横で言う。


「前例ないですよ」


ラザールは頷く。


「だろうな」


普通は成立しない。


種族間の憎しみ。


歴史。


戦争。


全部ある。


だが――


ここでは。


誰も気にしていない。


ラザールは呟いた。


「理由は簡単だ」


秘書


「何です?」


ラザールは街を見る。


市場。

畑。

工房。


「ここは」


静かに言う。


「生活が先だからだ」


種族より。


思想より。


まず飯。


まず仕事。


まず生活。


だから共存できる。


ラザールは苦笑する。


「政治家が聞いたら卒倒するな」


その頃。


レオンは畑にいた。


スコップを持っている。


隣には獣人。


後ろには魔族。


少し離れたところで竜族が寝ている。


セラが呆れた顔で言う。


「すごい光景だな」


レオン


「そうか?」


セラ


「人間と魔族が一緒に畑耕してるんだぞ」


レオンは言う。


「人手多い方がいい」


それだけだった。


セラは頭を抱える。


「この男は……」


夕方。


街の灯りがつく。


魔導灯が通りを照らす。


市場の喧騒。


笑い声。


異なる種族が同じ場所で暮らす街。


誰かが言った。


「ここ」


少し間。


「世界で一番変な街じゃないか?」


誰も否定しなかった。


グレイウッド。


それはもう――


辺境の村ではなかった。


世界初の


多種族都市になっていた。

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