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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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102/201

第101話:辺境の市場

グレイウッドの朝は早い。


まだ太陽が完全に昇りきる前から、村の中心には人が集まり始めていた。


荷車の車輪が軋む音。

馬のいななき。

商人たちの声。


数ヶ月前まで、この場所には何もなかった。


ただの空き地。

雑草が生えているだけの土地。


だが今は違う。


簡素な木の屋台が並び、

布の屋根が張られ、

人の流れが生まれていた。


市場。


まだ小さい。


だが確実に――


活気があった。


「道を空けてくれ!」


荷車が入ってくる。


荷台には木箱が積まれている。


商人が箱を叩いた。


「浄水魔導具だ! 新型だぞ!」


すぐに人が集まる。


「いくらだ?」


「銀貨三枚!」


「安すぎるだろ!」


笑い声が上がる。


別の屋台では乾燥肉が売られていた。


「ほらほら、焼きたてだ!」


匂いが漂う。


子どもが走り回る。


犬が吠える。


騒がしい。


だが――


悪くない騒がしさだった。


市場の端。


ラザールが腕を組んで立っていた。


巨大商会の商人。


この市場を作った張本人でもある。


彼は周囲を見回す。


商人。

職人。

流民。

冒険者。


人の数が、明らかに増えていた。


ラザールは小さく笑う。


「やっぱり来るか」


隣にいた部下が言う。


「王国の市場より賑やかになりそうですね」


ラザールは肩をすくめる。


「そのうち、な」


目線は遠く。


市場の中央。


そこでは村人たちが普通に買い物をしている。


誰も大騒ぎしていない。


ただ生活しているだけ。


それなのに。


人が集まる。


ラザールは呟いた。


「不思議な場所だ」


普通は逆だ。


人が増えれば治安が悪くなる。


争いが増える。


だがここは違う。


妙に落ち着いている。


その頃。


レオンは井戸の横でバケツを持っていた。


水を汲む。


普通の朝。


セラが通りかかる。


「おい」


「ん?」


セラは市場の方を指差した。


「人、増えすぎじゃないか」


レオンはちらっと見る。


確かに人が多い。


だが。


「そうか?」


「そうだよ」


セラは呆れた顔をする。


「村の三倍くらいいるぞ」


レオンは少し考える。


「まあ」


バケツを置く。


「困ってないならいいだろ」


それだけだった。


昼。


市場はさらに賑わっていた。


遠くから来た商人が言う。


「ここ、本当に辺境か?」


別の商人が答える。


「元は村らしいぞ」


「元?」


商人は周囲を見る。


屋台。

人。

荷車。

交易。


もう。


ただの村ではない。


誰かがぽつりと言った。


「これ……」


少し間。


「街じゃないか?」


誰も否定しなかった。


グレイウッドはゆっくりと変わっていた。


村から――街へ。


だがその中心にいる男は。


今日もただ。


水を汲んでいるだけだった。

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