表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/71

第六十一話「子孫」

 がっくりと肩を落としていると、ミカエラさんがわたしの背後に目を向けた。

 振り向くと、そこには……


「不快な気配がする上に騒々しいから出て来てみれば……随分と勝手を吐かしているな」


 いつの間にか、屋敷の入口にクロウが立っていた。


「出てきたな、吸血鬼」


 不敵に笑って、ミカエラさんは背中の大剣に手を掛ける。

 対するクロウは悠然とした足取りで、わたしの隣まで歩いてきた。


「平気か、ルビィ」


 こちらに視線を落として、クロウが問う。


「はい、特になにかされた訳じゃないので」


「そうか。で、こいつは何者だ?」


 クロウは、わたしからミカエラさんに目を移す。


「えーっと……」


 あれ、そういえばミカエラさんって何者なんだろう。

 よく考えてみると、名前ぐらいしか知らない。


「オレの名はミカエラ」


 わたしが答えに窮していると、ミカエラさんがそう名乗った。


「ざっくり言えば、魔物退治を生業にしてる。つまり、お前みたいな野郎を狩る仕事だ」


 挑発的な口調で、ミカエラさんはクロウに言ってみせる。


「……ただの退治屋か。それにしては気配が不快だ。不快すぎる」


 心底から不愉快そうに、クロウは顔をしかめている。どうしたんだろう。


「それだけじゃねえよ」


「ほう?」


「オレはたぶん、お前を封印した聖女の子孫だ」


 なんでもないことを言うように、ミカエラさんはそう口にした。


「……えぇ!?」


 思わず声を上げる。

 ミカエラさんが聖女の……『サント・ブランシュ』の主人公、プリムラの子孫……?

 そんなまさか……いや、でもそういえば……

 ミカエラさんと町で初めて会ったとき、わたしも微かに感じたのを思い出す。

 銀髪と琥珀色の瞳が、誰かに似ている気がすると。

 そうだ、どうして気がつかなかったんだろう。

 ミカエラさんの髪と瞳は、聖女プリムラと同じ色だ。


「なるほど……聖女の子孫か。どうりで不快さを感じるわけだ」


「お前、ご先祖サマが封印したとかいう吸血鬼なんだろ? 黒の王とか言ったか」


「前半は当たりだが、後半は外れだ。残念ながら、俺は黒の王ではない」


「なんだ、そうなのか……まあ、なんでもいいさ」


 ミカエラさんが背中の大剣を抜き、切っ先をクロウに向けた。


「どういう理由か知らないが、封印が解けちまったみたいだからな。子孫のオレが、ちゃんと処理しねえとだろ」


 剣呑な言葉を発するミカエラさんに、クロウは口の端を吊り上げる。


「ふ……やってみるがいい」


 クロウの魔力が高まるの感じた。


「ちょ、ちょっと二人とも……!」


 まさか、本気で戦うつもり?


「ポポちゃん、ライちゃん、二人を止めて……って!」


「すやすや」

「すやすや」


 寝てる! 少し離れた場所で、二匹寄り添って寝てる!

 退屈しちゃったのかな!

 くう……なんとも尊い光景を堪能したいけど、今は我慢だ。


「クロウさん、ミカエラさん!」


「ルビィ、少し離れてろ」


 そう言ったのはミカエラさんだ。


「随分とうちのメイドに馴れ馴れしいな」


 クロウが不機嫌そうに言う。

 そんなクロウをよそに、ミカエラさんはこちらへ手をかざす。

 すると――


「え」


 わたしの身体が、ふわりと後方に飛ばされた。

 すぐさま戻ろうとして、動きを止める。


「な、なにこれ……」


 光の壁が、わたしの行く手を遮っていた。


「結界を張った。お前はそこで待ってろ。必ず救い出してやる」


「ルビィ、大人しくしていろ。こいつはすぐに片づける」


 ミカエラさんとクロウが、同時に言い放つ。

 ああもう、どうしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=49427196&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ