第四十八話「町の異変(SIDE:ミカエラ)」
オレはライオネルを連れ、リスルムの町を訪れた。
「二日連続で来るなんて珍しいよね」
「そうだな」
足元を歩くライオネルに、オレは同意する。
今日も町にやって来た要件は一つ。昨日、魔法使いの塔跡に出る亡霊を倒したと神父に報告するためだ。
別に依頼されたわけじゃねえから報告する義務はないが、一応だ。
それに報告すれば、なにかしら報酬がもらえるかもしれない。
町の中を進み、見慣れた教会に到着する。
「……なんだか雰囲気が妙じゃない?」
「ああ」
教会全体から、ピリピリとした緊張感みたいなものが伝わってくる。
「なんだろう」
「さあな」
オレはまっすぐに礼拝堂を目指した。
重厚な扉を押し開けて、中に入る。
そこでは、神父と年配のシスターが深刻そうな顔を突き合わせていた。
「ミカエラくん……!」
オレに気づいた神父が、声を上げる。
いつもは悠然とした雰囲気をしたやつだが、今日は珍しく余裕がなさそうだ。
「なにかあったのか?」
端的にそう質問した。
神父は一瞬、逡巡するような表情を見せる。
だがすぐに「実は……」と事情を語り出した。
どうも教会に暮らしている子供の一人が、無断で町の外に出たらしい。
「それだけじゃなくてね……」
神父が続ける。まだなにかあるのか。
「他の子が言うには、いなくなった子供は『魔の森』に行ったみたいなんだ」
「曰く付きの森じゃねえか。その子供は、なんだって森に?」
「その子は聖女様の昔話が好きでね。あの森に吸血鬼の屋敷があると強く信じていたらしいんだよ。それで、どうも他の子と口論になったみたいでね」
つまり、他の子ってのがそいつに言っちまったのか。
「そんなのあるわけない」とか「迷信だ」みたいな台詞を。
で、教会を飛び出して森に向かった。
吸血鬼の屋敷とやらの存在を証明するために。
「さらに悪いことに、その子を追いかけたシスター・ミリアも戻って来ないんだよ」
神父は悲壮感を漂わせる。
ミリア……ああ、あの栗毛の若いシスターか。
「衛兵に報告は?」
「したよ。だが、動いてくれるかどうか……」
基本的に腰抜けだからな、リスルムの衛兵は。
だからオレみたいなのが重宝されるんだが。
「よし、オレが行こう」
「……いいのかい?」
「ああ、ただし『仕事』だからな。報酬は頂くぜ」
「もちろんだよ、ありがとうミカエラくん……本当にありがとう!」
神父はオレの手を取り、何度もそう繰り返した。
ちょうどいい。どのみち『魔の森』は調べる気でいたんだ。




