第四十七話「ブランチ」
クロウと二人でダイニングルームに向かう。
テーブルには、シャルさんの姿があった。
「おはようございます。兄さん、ルビィさん」
「ああ」
「おはようございます、シャルさん」
挨拶を交わしてから、食事の準備に取りかかる。
この時間だと、もうブランチだよね。
「ちょっと待ってください、すぐに用意しますから」
クロウとシャルさんに言って、わたしは厨房に移動した。
少し手を加えようと思って、料理は一度テーブルから下げていたのだ。
まずはベーコンエッグをパンに挟んで、サンドイッチにしてしまう。
それからスープを温め直して……あ、お湯もまた沸かさないと。
手早く準備を済ませ、ワゴンでダイニングまで運ぶ。
「お待たせしました」
料理をテーブルに並べる。わたしも着席してから、食事を摂り始めた。
わたしの料理は昨夜に続き好評なようで一安心した。
全員が食事を終えたタイミングで、わたしはクロウとシャルさんに訊ねる。
「コーヒーか紅茶、どっちにしましょう?」
「コーヒーをもらおう」
「私は紅茶でお願いします」
「わかりました」
厨房で紅茶とコーヒーを淹れてから、ダイニングへ戻る。
クロウとシャルさんの前にカップを置いてから、自分の席についた。
ちなみに、わたしはコーヒーにした。
紅茶かコーヒー、特にどっち派でもない。
今日はコーヒーな気分だったから。それだけだ。
湯気の立つカップを持ち上げて、熱々のコーヒーを口にする。
一息ついたところで、朝にポポちゃんから聞いた件を切り出す。
「実はポポちゃんが昨夜――」
屋敷を覗く、魔物らしいなにかを見たようだと説明する。
「気に入らんな」
不愉快そうにクロウが顔をしかめる。
「魔物ですか……私も気配は感じましたが」
たしかに、シャルさんも森に魔物がいるみたいだと話していた。
「ですが兄さん、放っておいても特に問題ないかと。そこまで強い気配でもありませんでしたから」
「そうだとしても、屋敷の周りをうろつかれるのは気に入らん」
コーヒーカップを置いて、クロウが勢いよく立ち上がる。
「行くぞ、ルビィ」
「え、どこにですか?」
「森にだ」
「ええ?」
藪から棒にどうしたんだろう。
「魔物とやらを調べに行く」
「いやでも、食事の後片づけがあるんですけれど……そもそも、なんでわたしを連れて行く気なんですか」
もしも魔物と戦闘になったりでもしたら、完璧に足手まといだよ。
調査なら、シャルさんとやるべきな気がするんですが。
「……これを話すのは初めてだったと思うがな」
神妙な面持ちで、クロウが切り出す。
「俺とシャルは今、かなり弱った状態にある」
「それは……精神的な話ですか?」
しょんぼりしちゃってる、みたいな。
「違う。身体的な話だ」
「と、いいますと?」
「封印されていた影響なのか、魔力の消費が激しいんだ。その割に、思うように力が出せないという始末でな」
なるほど、つまり。
「もしもの際は、わたしの血を吸うつもりなんですね?」
そのために同行を命じているわけだ。
「理解が早くていいな」
なぜかクロウは満足げだ。なにを満足してるんだろう。
「……わかりました、行きます」
血を吸われるのに、まだ抵抗はあるけど……しょうがないよね。
「でも、まだ待ってください」
「なんだ?」
「食器の片づけが先です」
きっぱりと告げる。洗い物を放置するのは好きじゃない。
「ああ……なら早く済ませろ」
「すぐ終わらせます」
本当はクロウの部屋も掃除したりしたかったんだけどなあ……




