第四十五話「朝食準備」
「うーん、なにを作ろうかな」
昨夜のポトフは、ポポちゃんがワイルドに食べてしまったし。
とりあえずスープとベーコンエッグにパン、それからサラダをチャチャっと作ってしまおう。あ、フルーツもいるかな。
飲み物はどうしよう。コーヒーか紅茶か……すぐ淹れられるように、お湯だけ用意しとこう。
ポポちゃんにもフルーツを持って行ってあげないとね。
手早く料理を済ませて、ダイニングルームに運ぶ。
テーブルにセットして、後はクロウさんとシャルさんが起きてくるのを待つだけ。
……しばらく待ってから、ふと気がつく。
もしかして起こしに行ったほうがよかったりするのかな、メイドだし。
うん、現れる気配もないから起こしに行こう。
ダイニングルームを出て、クロウの部屋に移動する。
最初にクロウを選んだのは、なんとなくだ。強いて言うなら長男だから。
部屋の前に立って、扉をノックする。
……反応がない。
もう一度、ノックしてみる。
…………やっぱり反応なし。
コンコンコンコンコンコンコンコン!
ちょっと強めに連続でやってみた。
ややあってから、扉が小さく開かれる。
隙間から、見るからに不機嫌そうなクロウが顔を覗かせた。
「……ルビィか。なんの用だ」
「朝です」
「……ああ、知っている」
「朝食の用意ができたので、ダイニングにいらしてください」
わたしの台詞に、クロウは大げさに溜息をついた。
「こんな時間に起こしにくるとは……非常識なやつめ」
「な、なんでですか」
朝食を摂る時間としては常識的なはずなんですけど。
「忘れているようなら教えてやるが、俺は吸血鬼だぞ」
「別に忘れてません」
「吸血鬼はな、基本的に夜遅くまで活動する生き物なんだ。夜のほうが魔力が高まるからな」
なるほど、要するに夜行性ってことか。
言われてみるとたしかに、吸血鬼って夜のイメージがある。
「えっと……つまり?」
「個体差もあるが、俺とシャルが起きるのはだいたい昼前だ。だから、俺様はまだ眠る。以上」
口早に言って、クロウは部屋に引っ込んでしまった。
「すみませんでした」
一応、扉越しに謝っておく。聞こえてるかわからないけど。
うーん……とりあえず、ポポちゃんにご飯をあげに行くとしよう。
ポポちゃんは起きてくれているといいけど。
いったん厨房に戻って、フルーツをのせたお皿を用意する。それから庭先に出た。
「ポポちゃーん」
名前を呼んでみる。
すると。
「ヒポポポポ~!」
元気な鳴き声と供に、ふっくらまんまるボディが走り寄ってきた。
「おはよう、ポポちゃん」
「ヒポポ~」
「朝ご飯、持ってきたよ」
「ヒ〜ポ〜」
あれ、もしかしてポポちゃんの言葉が理解できなくなってる?
一晩経って、魔法の効果が切れたんだろうか。
意識を集中させて、呪文を唱える。
「トッブウド・イタリベーシャ」
これでまた、ポポちゃんと会話できるはず。
「ポポちゃん、朝はフルーツでいい?」
「いいよ〜。ぼく、ちょうどこういうのがたべたかったんだ〜」
ポポちゃんは「あーん」と嘴を広げる。
食べさせてということらしい。
お皿の上からカットしたフルーツを手に取って、ポポちゃんの口内に入れる。
「おいし〜い!」
朝から元気だなあ。
「ぜいたくをいうなら、まるごとたべたかったな〜」
「あ、ごめんね。切ったほうが食べやすいかなと思って」
次からポポちゃんには丸ごとで用意しよう。
フルーツを美味しそうに食べるポポちゃんを見ていたら、お腹が鳴った。
「ルビィおねえさんも、おなかすいてるの?」
「うん、あはは……」
「なら、いっしょにたべようよ〜」
「それじゃ、ちょっとだけ……」
わたしはフルーツを摘んで口にする。
うん、よく熟してる。
酸味のあとに、じんわりと甘みが広がって美味しい。
「ところで、おねえさん」
「ん、どうしたの?」
「なんかきのうのよる、もりからやしきをみてるへんなのがいたんだ」
「変なの?」
いったい、なんだろう。
「もしかして魔物?」
「たぶん。でも、ぼくがいかくしたらにげていったよ〜」
ポポちゃんは「えっへん」と胸を張る。可愛い。
「すごいね」
「へへへ……」
手をのばして、ポポちゃんの頭を撫でる。
……クロウとシャルさんに報告しないとだよね。




