第四十四話「部屋②」
サロンを後にして、わたしは客間にやってきた。
客間だけでも結構な数があったけど、せっかくなので少し広い部屋を使わせてもらうことにした。
「おお」
まず目に入ったのは天蓋付きの豪華なベッドだ。
それ意外の家具もなんだか高そうだし、大事なお客様用の部屋なのかも。
なんと、部屋にはバスルームもある。これはかなりありがたい。
でも、ふと疑問が浮かんできた。
ここは、いわゆるファンタジー世界。果たして、お風呂はどんな造りなんだろう。
たしか『サント・ブランシュ』でも、主人公が入浴するシーンはあったような気がするけど……細かな描写はされていなかった。
『ルベーリア』の記憶を辿れば……いや、それより実際に見たほうが早いか。
そんなわけで、わたしは支度をしてバスルームに入る。
「普通にお風呂だ……」
白を基調とした、明るい雰囲気のバスルームだった。
こじんまりとしてるけどバスタブがあって、シャワーまである。
しかもバスタブは可愛い猫足だ。
「……どういう仕組みなんだろう?」
厨房みたいに薪で火を起こすような感じでもなさそうだし。
今度こそ『ルベーリア』の記憶を辿ってみる。
調べるのは、この世界のお風呂事情についてだ。
……どうやら、魔法の力が宿った特殊な石――魔石を使って水を生み出したり、火を起こしたりしているみたいだ。
封印の起点を探す際にわたしが感知した魔力の反応、この魔石のものだったのかな。
でもなんで、厨房は普通に井戸水とか薪を使っていたんだろう。
……『ルベーリア』の記憶によると、この魔石を使った設備はかなり高級な代物みたいだ。
厨房は井戸水と薪でも事足りるから、お金をかけなかったのかも。
それはそれとして。
わたしはありがたくシャワーを浴びさせてもらうことにした。
お風呂から出たわたしは、部屋にあったバスローブを身に纏ってベッドに横になった。
メイドなのに、随分といいご身分な気がする。洗濯は自分でするんだから、よしとしよう。
うーん、寝転がったら一気に疲れが押し寄せてきた。
一息つけたら、『ルベーリア』の記憶から色々と勉強したかったんだけど……今日は無理そう……
ヒポヒポって声と小鳥のさえずりで目が覚めた。
……ん、目が覚めた?
「あ、そっか」
口にしながら上体を起こす。
お風呂を出たわたしはベッドに寝転がって、そのまま眠ってしまったんだ。
窓の外に目を向ける。
日が射し込んでいるってことは、もう夜が明けているわけで……
「朝ご飯の用意しないと!」
ベッドから飛び降り、慌てて身支度を開始する。
鏡の前で髪を梳かして、一応薄く化粧をする。
それからメイド服に着替えて、準備完了。
部屋を出て、厨房へ向かう。




