第四十三話「部屋」
ポポちゃんがポトフを平らげた後。
厨房で鍋を洗ってから、ちょっと一休みしようとしたわたしは、ふと気がついた。
「わたしってどこで寝ればいいんだろう?」
この屋敷に置いてもらえることにはなったけど、そういう話はまだしていなかったよね。
「よし、さっそく相談しよう」
もう夜だし、早く決めてもらわなきゃ。
クロウはどこにいるだろう。
やっぱり自分の部屋かな?
そう思ってクロウの部屋に向かう途中、サロンから話し声が聞こえてきた。
見ると、シャルさんとクロウが向かい合って座っている。
テーブルにはワインボトルとグラス。二人で飲み交わしているみたい。
わたしは近くまで歩み寄って、声をかけた。
「クロウさん、ちょっといいですか」
なんだか物思いに耽っていた様子のクロウが顔を上げる。
「ルビィか、どうした」
「ちょっとご相談したいんですが」
言ってみろ、とクロウは話を促してくる。
「ルビィさん、どうぞ座ってください」
「あ、すみません」
勧められるがまま、わたしはシャルさんの隣に腰を下ろそうとした。
「おい、待て」
クロウがストップをかけてくる。
「え、なんですか?」
「お前は俺に相談があるんじゃないのか」
「はい、そうですよ」
部屋についての相談なら、シャルさんでもいいかなと思うけど。
「なら、どうしてシャルの隣に座ろうとする」
「どうしてと言われても……」
勧められたからで……別段、断る理由もないからだ。
わたしは中腰のまま、困惑するしかない。
「兄さん、どこに座ったっていいじゃないですか」
「ならば俺の隣でもいいだろう」
クロウの言葉に、シャルさんは苦笑する。
「すみませんルビィさん、兄さんは昔から自分の思い通りにならないと気が済まなくて」
「なんだシャル、お前が俺様に突っかかってくるなんて珍しいな?」
「ははは、突っかかるだなんて別にそういうつもりでは」
なんか、また二人の空気がおかしいような。
というか、わたしはいつまで中腰でいるんだろう。
いい加減に辛くなってきたので姿勢を正す。
「あの、なんでしたら、わたしは立ったままでも大丈夫です。ほら、メイドですし」
一緒に座るのも変だよね。
それにこのままじゃ、いつまで経っても相談できなさそうだし。
「そこまでへりくだる必要はない」
「ええ、その通りです」
なぜか二人は、そこで息ぴったり。
「……じゃあ、間を取って真ん中に失礼しまーす」
近くにあった椅子を持ってきて、クロウとシャルさんの間に陣取る。
「で、相談なんですけど」
呆気に取られた様子の二人に構わず、話を切り出した。
「わたしはこれから、どこで生活したらいいんでしょう」
「この屋敷に住まうんじゃなかったのか」
うん、それはそうなんですけどね。
「どの部屋を使えばいいのかなーと思いまして」
「客間を使えばいい」
クロウが短くそう答える。
「いいんですか?」
「駄目だと言われると思っていたのか?」
「いえ、てっきり使用人の部屋をあてがわれるのかなと」
メイドになったわけだし。
「使用人の部屋はすべて埋まっているはずだからな。要するに、前の持ち主が使っていたままになっているわけだ。お前が構わないというのなら、そこでもいいぞ」
「客間を使わせて頂きまーす」
さすがに、他人が使っていた部屋をそのままっていうのは気が引ける。
今から片づけるなんて、どう考えても大変すぎるし。




