第三十八話「魔法使いの塔跡地(SIDE:ミカエラ)」
町を出たオレとライオネルは、魔法使いの塔跡地にやってきた。
すっかり日は暮れちまって、辺りを照らすのは月明かりだけだ。
オレもライオネルも夜目がきくので特に問題はない。
「あれが魔法使いの塔跡地?」
「そうだ」
少し先の草原に、朽ち果てた塔が立っている。
それほど高くはない。
かつては空高くそびえていたのかも知れないが、現在は三階の辺りから上が存在していない。塔の周囲に散乱する瓦礫が、その名残なんだろう。
……聖女と悪しき魔法使いが戦った痕跡か。
そこにどんな背景があったのか、オレはよく知らないが。
本になったりしているみたいだし、ガキの頃に聞かされたような気もするが、まったく覚えてない。それに、正直どうでもいい。
「ミカエラ。あそこ、なにかいる」
「おう、わかってる」
まだ少し距離があるのに、嫌な気配がありありと伝わってきやがる。
……噂の亡霊ってやつか。
「行くぞ、ライオネル」
「退治するの?」
「ああ」
「依頼でもないのに?」
たしかに、そうだが。
「タダ働きかもしれないよ?」
「後から神父に報告すれば、なにかしらもらえるだろ」
それなりの信頼関係はある……と思う。
「やっぱりミカエラが感じたのって、この塔からの気配なのかな」
「どうだろうな」
オレが感じた物とは、また違う気もするが。
「どっちにしろ、やることは同じだ」
「はいはい、お仕事だね」
移動して、入口から塔の内部に進む。
朽ちた塔に足を踏み入れた瞬間。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……」
地の底から響くような声がした。
「出やがったな」
オレの眼前に、ぼろ切れを纏った人間のような姿をしたやつが現れる。
頭部はフードに覆われていて、顔は判然としない。
宙に浮かぶこいつは、もちろん人間じゃない。もっとも、昔はそうだったのかもしれないが……今じゃ哀れな亡霊だ。
「もしかして、悪しき魔法使いの亡霊とか?」
「いや、そこまで強力な存在じゃねえだろ」
どんな謂れのある霊かは知ったことじゃないが――
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
どうも、やり合う気は満々らしい。上等だ。
オレは背中の剣を抜く。
「来い、きっちりあの世に送ってやるよ」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
亡霊が飛びかかってくる。
オレは剣を構え、石床を蹴った。




