第三十話「合流」
さて、シャルさんはどこだろう。
わたしを置いて、屋敷に帰ってたりして……それは、ちょっと笑えない。
「ルビィさん」
不意に背後から声をかけられた。聞き覚えのある声だ。
わたしは振り返りる。はたして、そこに立っていたのは、満面の笑みを浮かべたシャルさんだった。
「いやあ、随分と捜しましたよ」
にこやかに言って、シャルさんはわたしに近づく。
「シャ、シャルさん……?」
安堵したのも束の間、わたしは思わず後退る。
「おや、どうしたんですか?」
笑顔が怖い。これ、絶対に怒ってるよね。
う、うう……ここは素直に謝ろう。
「ごめんなさい!」
わたしは頭を下げる。
「…………いえ」
しばらく沈黙した後、シャルさんが口を開く。
わたしは、おそるおそる頭を上げた。
そこにあったのは、苦笑するシャルさんの顔だ。
「こちらこそ、すみません。私が不注意でした。……とにかく、無事でよかった」
「いやいや、わたしがボンヤリしていたからです」
「いえ、私がルビィさんから目を離したせいです」
なんだこれ。なにを主張し合っているんだろう。
おかしくなってきて、つい吹き出してしまう。
「笑い事ではないのですが」
「はい、ごめんなさい」
そういうシャルさんだって、ちょっと表情が緩んでます……と思ったけど、余計なことは口にしないでおこう。
「ルビィさん、お互い気をつけましょう」
「わかりました」
「ところで、はぐれている間は不用意に街の人と接触したりしませんでしたよね?」
わたしはシャルさんから盛大に目を逸らす。
「ルビィさん?」
「え、えーっと……」
でも、ミリアさんとミカエラさんは不可抗力だと思う。
「ふ、二人ほど」
「はぁ……詳しく聞かせてください」
わたしはシャルさんに、はぐれている間の出来事を話した。
「なるほど。それぐらいならば、問題はなさそうですね」
「ちなみに、ミカエラさんという人が連れていたワンちゃんがとっても可愛かったんですよ」
あ、違った。ライちゃんは狼だ。
「よし、今すぐ教会へ行きましょう」
シャルさんが無駄に真剣なトーンで言い放つ。
わりと予想通りの反応だった。
「と言いたいところですが、そろそろ屋敷に帰りましょう。残念極まりないですが」
シャルさんは深く嘆息する。
どんだけ落胆してるの。気持ちはわかるけど。
「あ、帰る前に少し市場で買い物してもいいですか?」
「構いませんが、なにを買うのです?」
「晩御飯の食材です」
「ああ……」
納得したようにシャルさんが頷く。
「それなら屋敷の厨房に、いくらかはありましたが」
「本当ですか? どれくらいありました?」
「いや、正確な量までは……」
ならやっぱり、食材は買っておいた方がいいだろう。
今夜だけじゃない。明日からも必要なんだから。
そうと決まれば、お店に突撃だ。




