第二十五話B「食事(SIDE:シャルティア)」
ルベーリア・オズボーンに対する私の印象を簡潔に表すなら……
不思議な女性、というのが適切だろう。
本来、貴族として立場が上のはずである私や、兄……クロウ・インバーテッドに対して物怖じしない態度で接してくる。
もっと根本的に、吸血鬼である私たち兄弟をまるで怖れている様子がない。
今も、私の眼前で食事をする彼女は、どこまでも自然体だった。
「あむあむあむ……本当においしい~」
……あまりに自然体すぎる。というより、まるで伯爵令嬢らしくない。
などと考えながら食事をしていたら、私は自分が頼んだサンドイッチを瞬く間に食べ終えてしまった。
一緒に注文した紅茶のカップに口をつける。
……サンドイッチも、この紅茶も、そこそこの味といったところか。
手持ち無沙汰な私は、夢中で料理を食べるルベーリアを観察する。
口いっぱいに料理を頬張るその姿は……貴族令嬢として見ればはしたないにも程がある物だった。
しかし……
「はあ……幸せ」
心底から満たされているような表情。
口内にたくさん含んだ物を懸命に咀嚼する様は、なんというか……
愛らしいかもしれない。
そんな自分自身の思考に、私は驚きを禁じ得なかった。
正気か、シャルティア・インバーテッド。そう自問する。
私が人間に対して、そのような感情を抱くなど――
「……食べますか?」
ふと、ルベーリア・オズボーンが声をかけてくる。
どうやら、こちらの視線に気がついたらしい。なぜだか私が、料理を欲していると勘違いされてしまったようだ。
……本当に、おかしな女性だ。
私は自然、小さな笑いをこぼしてしまう。
「……面白い女性ですね、貴女は」
私がそう口にすると、ルベーリア――ルビィは、苦い笑みを浮かべた。
「な、なんですか急に……」
「いいえ、気にせず食事を続けてください」
「は、はあ……」
こちらを窺いつつ、ルビィは食事を再開した。
そんな様子を見ながら、私は紅茶を飲む。
なぜだか不思議と、味が良くなったように思えた。




