第二十五話「食事」
お店には、なんとか迷うことなくやって来られた。
「ここですか。たしかに、いい店構えですね」
シャルさんも、お気に召したみたいだ。
わたしは店内を覗く。何組かお客さんはいるけど、特に混雑はしていない。
「ルビィさん、入りましょう」
「あ、はい」
シャルさんとお店に入る。
「いらっしゃいませ」
感じのいい店員さんが出迎えてくれた。
「お好きな席にどうぞ」
ニコニコと店員さんがそう告げる。
「どうしますか、ルビィさん」
「じゃあ、せっかくですから……」
わたしとシャルさんは、外のテラス席に案内してもらった。
テーブルについて、メニューに目を通す。
飲み物、食事、スイーツ……結構、色んな種類があって迷う。
ふと視線を感じて、品書きから顔を上げる。
シャルさんが、微笑を浮かべてこちらを見ていた。
「あ、ごめんなさい……なかなか決められなくて」
「いいえ、構いませんよ。それに、遠慮はいりません。好きな物を好きなだけ注文してください」
おお、なんとも豪快な発言。まあ、お金ならたくさんあるもんね。
このお店に来る道中、シャルさんは骨董品店で手持ちの銅貨を一枚だけ換金していた。
一枚だけなのに、この時代のお金に換算すると、そこそこな額になったみたいだ。
「本当にいいんですか?」
「ええ、どうぞ」
「それじゃあ遠慮なく……」
店員さんを呼んで、注文する。
しばらくすると品物が運ばれてきて、一気にテーブルが賑やかになった。
シャルさんが注文したのは、ハムとタマゴのサンドイッチ。飲み物は温かい紅茶だ。
「それだけで足りるんですか?」
サンドイッチは大き目だけど、二きれしかない。
「逆に……本当にそれを食べきれるんですか?」
わたしの前に並んだお皿を見ながら、シャルさんは苦笑気味に言う。
パスタ、ハンバーグ、スープにライス。食後のスイーツにケーキと、酒場にあったポッコリのジュースも頼んでしまった。
「ぜんぜん問題ありません」
腹ペコだし、これぐらい余裕だ。
「いただきまーす」
わたしは手を合わせ、そう声に出す。
それからナイフとフォークを持ち、料理に手をつけ始めた。
まずはハンバーグを切って、口に運ぶ。
「おいしい……」
しみじみと呟く。すごく久しぶりに、お肉を食べたような気がする。実際、二百年間は食べてなかったわけだけど……自分の体感的にもって意味で。
わたしは夢中で他の料理も食べていく。
またもや視線を感じて、わたしは手を止めた。
……シャルさんが、こちらをジッと見つめている。
なんだろう。もしかして、わたしのも食べたいとか……
「……食べますか?」
わたしはおずおずとシャルさんに料理を勧める。
シャルさんは呆気に取られたような表情をした後、ふっと笑みを浮かべた。
「……面白い女性ですね、貴女は」
え、なに。唐突にまた来たよ、面白いシリーズ。
わたし、なにかしたっけ?
「な、なんですか急に……」
「いいえ、気にせず食事を続けてください」
「は、はあ……」
いや、気になるよ。……食事は続けるけど。
「あれ」
よく見ると、シャルさんはすでに自分の食事を終えているみたいだった。
食べるの早いなぁ……。きっとシャルさんも、すごくお腹空いてたんだな、うん。
なんて納得しつつ、わたしは自分の食事を再開する。
それからわたしは、スイーツまで綺麗に平らげた。
「ごちそうさまでした」
お腹いっぱい。満足、満足。




