↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/71

第二十六話「迷子」

 いきなりだけど、わたしは迷子になってしまった。


「ここ、どこだろう……」


 寂れた通りで一人、呆然と立ち尽くす。

 シャルさんとはぐれてしまったのは、町を巡っている途中だった。

 食事を終えたシャルさんとわたしは、お店を出ると当初の予定通り、町の中を見て回ることにした。

 そうして二人で市場に行って……色々なお店を覗いているうちに、気がついたら一人になってしまっていたのだ。

 焦ったわたしは人混みの中、シャルさんを探して歩き回ったんだけど……いつの間にかまったく違う場所に来ていた。どうしてこうなった。


「そうだ、市場に戻れば……」


 駄目だ。もはや道がわからない。適当に歩いてたら辿り着くかな。

 いや、そもそも人に道を訊いたら済む話だよね。

 そう思って辺りを見渡してみるけど……


「人が、いない……」


 でも、誰かいそうな建物は近くにあった。

 大きな円錐形の屋根に十字架が立った建物……たぶん教会だ。

 あそこなら、迷子のわたしに道を教えてくれるはずだよね。教会だけに。

 ……しょうもないこと思ってないで、さっさと行ってみよう。

 わたしは通りを歩いて教会に近づいた。開かれた門を抜けて敷地内に入る。

 教会の庭には修道服を着たシスターらしき一人の女性と、数人の子供がいた。

 子供たちは芝生の上に座っていて、目の前に立つシスターを見上げている。


「シスター、はやくはやく」


 子供の一人が、なにかを待ちきれない様子で声を上げる。


「はいはい、わかってますよ」


 シスターは困ったように笑みながら、手に持っていた本を開いた。

 読み聞かせかな?


「ええと……どこまで読んだかしら」


「聖女様が、悪い吸血鬼の屋敷に乗り込んだところー」


「ああ、そうだったわね」


 うん? 聖女に吸血鬼って、もしかして。

 わたしは足を止めて、シスターの話に耳を傾ける。


「聖女プリムラと魔法学校の仲間たちが吸血鬼の屋敷に乗り込むと、そこには……」


 プリムラ……やっぱり、『サント・ブランシュ』の主人公だ。

 すごいな、子供に読み聞かせる本にまでなってるのか。

 そういばゲームのエピローグにも、大人物になったような描写があったような気もするな。


「吸血鬼の親玉、黒の王が復活していたのです」


 黒の王……アルバート・インバーテッド。クロウとシャルさんのお父さんだ。

 本来なら、わたし……『ルベーリア』は彼を復活させる生贄として、命を落とすはずだった。

 それが、どういうわけだか生き延びて……聖女の封印に巻き込まれちゃって……

 封印が解けたと思ったら二〇〇年後だった、と。

 改めて考えると、よくわからない状況だよね。


「怖ろしい化物のように暴れ回る黒の王。聖女プリムラと魔法学校の仲間たちは力を合わせて、黒の王と激しい戦いを繰り広げます」


 魔法学校の仲間たちっていうのは、たぶんゲームの攻略キャラたちだよね。


「戦いの末、プリムラは仲間と協力して黒の王を屋敷や、他の吸血鬼ごと封印するのでした」


 めでたし、めでたし……巻き込まれた身としては、めでたくないけど。


「吸血鬼との戦いが終わっても、聖女プリムラの冒険は終わりません。むしろ、これが始まりだったのです」


 え、そうなの?


「悪の魔法使い……人狼族……封印されし邪竜……プリムラは仲間たちと数々の戦いを繰り広げるのですが、それはまた別のお話しです」


 おしまい、とシスターが締めくくる。

 子供たちが「えー」と声を上げると、笑顔で「続きはまた明日です」となだめすかした。

 わたしもちょっと聞きたいかも。プリムラって、そんなに色々と活躍したんだ。

 ふと、シスターと目が合う。

 ニコリと微笑まれたので、こちらも笑みを返した。

 別のシスターがやって来て、子供たちを教会の建物に引率していく。

 子供たちを見送ると、読み聞かせをしていたシスターは、わたしの前までやってきた。

次回の更新は、あさって水曜日になります。

もしよろしければ、ブクマ、評価など頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=49427196&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。