第二十話「名前を決めよう②」
「なんだ、お前らまだ居たのか?」
そう言ってサロンにクロウが姿を現した。
さっきの出来事を思い出してしまい、顔が熱くなる。
わたしは恥ずかしくて、クロウをまともに見ることができなかった。
……いや、なんでわたしが恥ずかしがらなきゃいけないんだろう。
うんうん、意識しないようにしよう。
わたしは気を取り直して、クロウに向き直る。
「チョコか……シャル、俺にもくれ」
「どうぞ、兄さん」
クロウはシャルティアさんが差し出したお皿から、チョコを摘まんで口に含む。
あの口で、わたしの首に……って、なに考えてるんだ、わたし!
頭を抱え、ぶんぶんと振り回す。
「ルビィ、なにをしている?」
「……はっ、いえ、なんでもありません」
「そうか? ところで、お前らなにを話し込んでいたんだ?」
「実はですね――」
シャルティアさんはクロウに鳥さんの名前を考えていたと説明した。
「なるほど、ヒポグリフの名前か……どうでもいいが、シャルよ」
「なんです?」
「シャルティア二世という命名はどうかと思うぞ」
クロウはちょっと引き気味でシャルティアさんにそう告げた。
「そ、そうですか……」
ショックを受けるシャルティアさん。この人、意外と愉快かも。
「お前らしくはあるがな」
「そうだ、クロウ様はなにかいい案はないですか?」
「俺か?」
そうだな、とクロウは腕を組む。
「バルバトス、なんてどうだ?」
厳ついよ! わたしは思わず胸中で叫ぶ。
「ど、どうかな鳥さん」
「う~ん……つよそうでかっこいいけど、ぼくのかわいいいめーじとは、ちょっとあわないかなあ……」
「そ、そう……」
その通りだけど……かわいいっていう自覚はあるんだね。
実際かわいいから、いいんだけども。
「なんだ、バルバトスは気に入らんのか?」
「はい、駄目みたいです」
「ほう、贅沢な鳥だ」
そう言うクロウだけど、特に気分を害した様子はないみたいだ。
それにしても、思ったよりも命名に手こずってるなあ。
うーん、鳥さんは自分でも言うように、かわいいイメージだよね。
てことは、かわいい名前が合うような気がする。
わたしは、改めて鳥さんの姿をじっと見つめてみた。
「な、なあにおねえさん、そんなにみられたらぼく、はずかしいよ~」
照れた様子で身体を揺らす鳥さん。うん、かわいい。
全体的に丸っこくて、ふわふわしていて、まるでそう……たんぽぽの綿毛みたいな。
「……あ!」
わたしは閃きを得て声を上げた。
「ポポちゃんっていうのは、どうかな。たんぽぽの綿毛みたいで、かわいい鳥さんのイメージにぴったりだと思うんだけど……どうでしょう?」
わたしはクロウとシャルティアさんを見る。
「さてな、いいんじゃないか?」
「たんぽぽの綿毛……ポポ……愛らしい……」
特に異論はなさそう。問題は、鳥さん自身が気にいってくれるかだ。
「ど、どうかな?」
「ぽぽ……うん、かわいくて、すてきだとおもうよ~!」
「本当に? それならよかった」
「ありがとう、おねえさん~」
「ううん、改めてよろしくね、ポポちゃん」
「こちらこそ、よろしくだよ~」
そんなわけで、鳥さんの名前はポポに決定した。




