↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/71

第十六話「補給」

 クロウの自室は、サロンと同じく二階にある。

 わたしは廊下を移動して、クロウの自室前までやってきた。

 それにしても、話ってなんだろう。まぁ、中に入ればわかるよね。

 わたしは木製の扉をノックする。


「入れ」


 返事はすぐだった。

 扉を開き、わたしは部屋の中に進む。


「失礼します……うっ」


 室内を目にしたわたしは、思わず呻いてしまった。

 おそらくは、とっても広い部屋。だけど、ほとんどの空間がたくさんの本で埋め尽くされている。

 たくさんの本は整理されているわけでもなく、部屋のあちこちに乱雑に散らばったり、積み上げられたりしていた。

 室内は埃っぽくて、隅には蜘蛛の巣も……

 はっきり言って、クロウの自室は汚い。

 なんか意外……きちんとしてそうなイメージなんだけどな。


「おい、なにをしてる?」


 部屋の奥にある書斎机から、クロウが声をかけてきた。


「さっさと入ってこい」


「は、はい……」


 かろうじて残ってる足の踏み場を通って、わたしは書斎机の前まで進む。

 うーん、机の上も本でいっぱいだ。

 ざっと見た感じ、ほとんど魔法に関する本みたい。

 クロウは読書が好きなのかな。

 ……いや、ここまで来ると、単純に好きっていうレベルじゃなさそう。

 なにかの研究をしている……とか?

 それにしても……本当に散らかってる。

 ああもう……片付けたくてウズウズしてきた。


「おい」


 椅子に座って机に頬杖をつきながら、クロウがわたしの顔を見上げてきた。


「顔が引きつってるぞ、どうした?」


「へ? いや、なんでもありません、なんでも」


 わたしは誤魔化すように手を振る。

 部屋の惨状については意識しないことにしよう。


「それで……お話しって、なんでしょうか?」


「単刀直入に言う」


 低い声音で、クロウが告げた。

 わたしは喉を鳴らす。なんだろう、この緊張感。


「ルビィ」


「は、はい……」


「お前の血を吸わせろ」


「――――はい?」


 いきなりの申し出に、わたしは戸惑うしかない。


「な、なんでですか?」


 とりあえず理由を訊ねてみる。

 すると、クロウは眉をしかめた。


「なんでもなにも、俺が吸血鬼だからだ」


 あ、うん。そうだよね。

 血を吸うから吸血鬼なんだし。


「それはわかってます。どうして、わたしの血を吸うんですか」


「……説明しないとわからないのか」


 クロウが嘆息する。なんか腹立つ。


「吸血鬼は活動するだけで、それなりの魔力を消費する生き物だ。だから魔力が多く含まれる血液を摂取する必要がある」


 ふむふむ。それが、この世界における吸血鬼なのか。


「あの……なにか他の物で代用できないんですか?」


 吸血鬼を扱う作品には、前世でそれなりに触れたことがある。

 そういう作品の中には、血の代わりになる物を摂取したりっていうパターンもあったと思う。


「無理だ」


 はっきりと言われてしまった。


「えぇ……でも、魔力が補給できればいいんですよね? なにか方法はないんですか? 例えば、動物の血を保存してたりとか……」


「俺のような純血種より下位の吸血鬼ならば、それで事足りるだろうがな」


 出たよ、純血種。ちょっとなに言ってるかわからないです。


「ちなみに……血を吸わないとどうなるんですか?」


「魔力が枯渇して、灰になって消える――と言われているな」


 つまり死ぬ、というか消滅しちゃうわけだ。


「その前に、理性をなくす」


「はあ……」


「正直な話……俺は今、その危険が迫っている」


「…………ええ?」


 とてもそんな風には感じられないけど。偉そうだし。

 でも……言われてみると、心なしか体調が悪そうかも?


「理性がなくなると、どうなるんですか」


「そうだな……まずは吸血衝動を抑えられなくなって、お前を襲うだろう」


「こ、困ります」


 わたしじゃ、吸血鬼に……クロウに対抗できないだろう。


「ふ……困る、か。ならば、大人しく血を吸わせろ」


「それも困ります」


「……なぜだ?」


 いや、なぜって……


「血を吸うって、あれですよね。首筋とかをこう、ガブッとやるんですよね」


「まあ、そうなるな」


「痛いじゃないですか」


 あんまり痛いのは、ちょっと勘弁して欲しい。


「心配するな。そこまで痛みは感じないはずだ。チクリとする程度だぞ」


 ……本当かなあ。とても信じられない。


「……まずいな」


 不意にそう呟いて、クロウはガタリと椅子から立ち上がる。


「ど、どうしたんです?」


「…………」


 クロウは無言で、わたしの方へ近づいてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=49427196&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。