第十五話「クロウの部屋へ」
話し合いが終わった後、わたしは鳥さんと一緒にサロンで待機していた。
クロウは自室に行くと言って席を立ち、シャルティアさんも後に続いて行ってしまった。
わたしの頭は、さっき聞かされた仮説でいっぱいだ。
もし、本当にクロウとシャルティアさんの考えが正しかったら……どうなんだろう。
わたしとしては、別に驚きはしないかも。
まず乙女ゲームの世界に転生しているって時点で、相当にあり得ない出来事が起こっているわけで。
これ以上なにが起きても、そこまでビックリはしないと思う。たぶん。
すべては町に行けば判明するはず……
ぐぅ。
突然、わたしのお腹が小さく音を立てた。
「おねえさん、おなかがすいたの?」
「うん、あはは……」
すぐ隣にいる鳥さんに、わたしは恥ずかしながら……と、曖昧な笑みを向ける。
シャルティアさんが戻ってきたら、出発前になにか食べさせてもらおうかな。
屋敷の中に、なにかしら食べ物があるはずだよね。もしなかったら、とても困る。
「あ、でも森の中にも食べられる物とかあったりするのかな……」
森で採った木の実を食べるとか、ちょっと憧れたりする。
うぅ……考えてたら、余計にお腹が空いてきちゃった。
「ルベーリアさん」
「シャルティア様」
お腹をさすっていると、シャルティアさんがサロンに戻ってきた。
よし、なにか食べ物がないか訊ねないと。
「あの……」
「ルベーリアさん、少しいいですか?」
シャルティアさんが、わたしの機先を制するように口を開く。
「な、なんでしょう」
「出発前に、兄さんから話があるそうです」
「クロウ様から?」
なんだろう。激励とか……絶対なさそう。
「兄の部屋まで行ってもらえますか?」
「わかりました」
「……あぁ、そうだ。場所はわかりますか?」
「はい、大丈夫ですよ」
起点探しのとき、一度だけ部屋の前まで行った。場所はちゃんと覚えてる。
「では、よろしくお願いします」
「はい、わかりました」
「おねえさん、ぼくもいっていい?」
移動しようとするわたしに、鳥さんが声をかけてくる。
「え、どうだろう」
わたしとしては、ぜんぜん構わないんだけど。
「あのシャルティアさん、この子も行きたいみたいなんですが……」
「いえ、どうぞルベーリアさん一人でお願いします」
きっぱりと言われてしまった。
「ごめんね鳥さん、駄目だって」
「えー」
「このヒポグリフは、私が相手をしておきましょう」
どこか嬉しそうに、シャルティアさんは鳥さんに触れようと手を伸ばす。
――ばしん。
その手を、鳥さんは翼で払いのけた。
「…………」
無言で愕然とするシャルティアさん。
「と、鳥さん、どうしたの?」
「ぼく、なんかこのひとすきじゃない」
ええ……なんでだろう?
「……ルベーリアさん」
「は、はい?」
「ヒポグリフは今、なんと言っていましたか?」
「え、えっと……」
どうしよう。
たぶんだけど、シャルティアさんは鳥さんを気に入ってるよね。
鳥さんを目にしたときの反応が、それを如実に語っていたと思う。
もしかしたら、可愛い生き物とかが好きなのかもしれない。
……そんな相手に真実を伝えるなんて、わたしにはできない。したくない。
「わ、わたし、もう行かないと~!」
それじゃ、と手を上げて、わたしはサロンを足早に去った。
「ル、ルベーリアさん!」
シャルティアさんの声が聞こえたけど、振り返らずに進む。
うう……ごめんなさい。




