第52話
ハルシウスが目を覚ますと、土を触る。顔を上げると覗き込んでくるルミオと目が合う。
「起きましたか」
膝に乗っている頭を上げて立ち上がった。さっきまで戦っていた書庫は崩壊し、研究所は全棟が壊れている。近くには竜とウェルドレッドも横になっていた。竜の身体はほとんど残っておらず、全身の肉が露出している。ルミオがハルシウスの視線に気づくと、悲しい顔をした。
「竜はもう……」
二人とも近づいて目を落とす。
すると、ハルシウスが一つの大きな塊を取り出した。スイカ程の大きさのその塊はほとんどの部分が透明のゼリー状になっており、中央がわずかに光っているが、やがて消えて透明になった。
「それが魔法臓器ですか」
「うむ。これだけしか機能していなかったのにあの魔力じゃったのか……」
ハルシウスは強く拳を握っていた。
「……まあなにはともあれ、お主が戻ってきて嬉しいぞ!」
笑顔でルミオの首に手をまわして肩を組んだ。
「僕も嬉しいです。でも、二度も助けてもらうなんて……」
ルミオの顔が落ち込むのを見てハルシウスはため息をついた。
「お主は少し臆病が過ぎるな。わしは雇い主なんじゃから助けるのは当たり前じゃ。その分これからいっぱいいうことを聞いてもらうぞ! 先ずは助けられたことは気にするな」
ルミオは少し顔を上げて笑った。
「分かりました。これからもよろしくお願いします」
「うむ。……それより、全部思い出したのか?」
頷くと、真剣な顔になって語り始めた。
「まだ集落が平和だった時に誰かに後ろから気絶させられたのは本当でした。でも、目を覚ましたら集落は燃えて僕はあのチェスリンに運ばれていました」
「じゃあ、集落はもう……」
「はい、チェスリンも同じことを言っていました。『あそこに生き残っている者はもういない』と」
「そうじゃったか、そしてお主は実験の道具にされたと」
ルミオが下を向いて苦しそうに口を抑える。ハルシウスは慌てて背中をさする。
「すまなかった。辛かったのお」
「いえ、もう大丈夫です。それより……その後が問題なんです」
「と、いうと?」
ハルシウスが首を傾げる。
「実験の中で徐々に記憶をなくしていったんですけど、次に覚えているのが奴隷船の中だったんです」
「なるほど。どうやってチェスリンから逃げたかは覚えておらぬのか」
「はい、実験されてたことは間違いないんですけど……」
二人が考え込んでいると、遠くから小さな声がした。
「二人とも大丈夫みたいだね」




