第51話
ルミオは力強く自らの足で立っていた。白と黒の入り混じる大きな魔力を見に纏い、槍を構える。
「目覚めたようじゃな」
ハルシウスが横に並び、杖を構える。ルミオは笑顔で答えた。
「はい! 頭の中で色々考えていたら、ハルさんの声が聞こえてきたんです」
竜が高い声で鳴くと、地下が揺れた。二人は転ばないようにバランスを取る。
「……詳しい話は後じゃ」
「分かってます! 僕はいつでも大丈夫です」
ハルシウスが竜とウェルドレッドを交互に見る。
「それでは竜の方を頼めるか?」
「勿論です。でもハルさんはその怪我で大丈夫ですか?」
ハルシウスは立つことでさえ辛そうにしている。
「わしを誰だと思っておる。あの男は任せておけ」
ハルシウスと目が合うと、ウェルドレッドが斧を構えた。
「あのガキは任せたぞ。今度こそヘマするなよ」
ギロリと竜を睨むと、ハルシウスに向かってきた。ハルシウスが動くより素早く攻撃して一点に固定する。
「確かにまだ魔力はあるようだがその傷で勝てる訳ねえだろ!」
斧が思いっきり杖を叩き、吹き飛ばされる。ハルシウスはギリギリの所で倒れずに両足で踏み止まった。
「確かにもう身体は言うことを聞いてくれぬ。しかしお主もルミオを見て焦ってるようじゃな? それに……」
ハルシウスが向くより先にウェルドレッドは竜の方に目を向けていた。
竜が吠え、真っ白な剣が刃を向けて何本もルミオを大きく囲うように並ぶ。鉤爪を下ろすと同時に剣は風を切る音を立てて一斉に中心に降りかかる。
しかし、ルミオは更に速く動いて円の下を潜り抜ける。そのまま竜に槍を突き刺し、竜の下ろした鉤爪と競り合う。槍の先に魔力が集中し、ぶつかり合う音が高く唸る。
「注意が散漫になっとるのお。お主はあやつを信用しておらぬようじゃな」
いつの間にかハルシウスは立ち位置が数歩分右にずれていた。
「あいつは脅してるだけだからな。ガキの方が厄介だし、お前をさっさと倒すぞ」
「いや、もう良いのじゃ」
ハルシウスは杖を向ける。ウェルドレッドは口を開けた。
「は? 何を言って……」
「わしはここ、お主はそこが良いのじゃ」
ウェルドレッドは左右を見て初めて自分が四角の一つに立たされていることに気づく。
「ルナーショット!」
ダークネスロッドから勢いよく光が放たれる。ウェルドレッドは斧で防ぐが、徐々に下がり、後ろの壁にぶつかった。
「確かに受けるしか無いが、それがなんだ? お前の攻撃は何一つ効かないぞ」
そう言いきった直後に目を大きく開く。ハルシウスの左手には小さな円盤状に魔力が集まっていく。杖から放たれる光は止めずにゆっくりと歩いて迫る。口は大きく緩み、目尻は垂れて顔がほころんでいる。
「頭くらいなら入るじゃろうなあ」
ウェルドレッドの顔は直ぐに恐怖に満ちた。斧を振って光を弾くが、後の光が腹に直撃して全身に光を浴びて寧ろ身動きが取れなくなる。手で体を触れる位置まで来ると、黒い円盤をウェルドレッドに向けた。円盤が近づくに連れてウェルドレッドの叫びは増してゆく。
「ああああ‼︎」
白目を向いた所で、ハルシウスはダークネスロッドから光を止め、杖を下ろした。
「気絶してしまったか」
ハルシウスの足もふらつき、二人とも同時にバタリと倒れた。左手の円盤も消えていく。
「わしも限界じゃったか。ルミオは……」
後ろを向こうとした瞬間、耳を塞ぐほどの音が鳴り響く。耳を押さえたまま後ろを向くと、ルミオがこちらに向かって走ってくる。後ろでは竜の全身が光を集めながら風船のように膨らんでいる。ハルシウスの元まで来て右腕に抱えると、すぐさま槍を上に向けた。同時に、竜の身体から白い光が飛び散った。




