第50話
「ようやく目覚めたか」
ウェルドレッドが竜を怒鳴りつけている間にハルシウスは近寄る。ルミオは声を出さずにハルシウスに目を向ける。
ハルシウスは膝をついて座るルミオの手を取った。ルミオの手を取って近づくと頬を優しく引っ張る。
「返事をせい」
虚ろな左目を指で無理やり大きく開くと、僅かに口が動いた。
「皆、死んだのに僕はそれに目を背けて生きてしまった……」
ハルシウスがルミオの顔を触っていた手を止めると真剣な眼差しになる。
「お主が集落の皆を殺したわけではなかろう?」
返事はなく、視線は遠くを見つめている。
「これは重症じゃのお……」
ふうと一息つくと、目を瞑り、両手を頭に当てて下を向いて考える。
ハルシウスは目を開くと、ルミオの頭に手を回して顔を近づけた。
互いの唇が一つに繋がる。
ウェルドレッドと竜の目が二人に向けられる。ルミオの手がぴくりと震える。目にはわずかに生気が戻る。
ハルシウスが唇を離した。
「お主には臆病な一面もあったのじゃな。ますます気に入ったぞ。……忘れたくなるほど辛かったのじゃな」
ルミオの頭の上に手を置いて撫でる。
「わしは人の気持ちなど分からぬが、自分が死んでそのように悲しまれてたら一発殴りに行きたくなるわ」
「でも、どうやって償えば……」
足元に落ちている槍を広い、握らせる。ルミオの目に刻印が映る。
「これからはたまに弔ってやれ。あとは……」
ダークネスロッドをついて立ち上がった。
「残された時間で考えるのじゃ。たまにはわしも付き合ってやる」
後ろを向いて、杖をウェルドレッドに向けて構えた。しかし、左手は上がらずにぶら下がっている。
「……それじゃあ戦えないだろ。悪いがもう終わりだ。おら、やれ」
竜が牙を見せながら目に見えないほどの速さで突進してきた。ハルシウスが杖を振ろうとしたその時だった。
目の前で竜の牙に槍が刺さる。牙は一瞬で砕けて竜は天井まで飛んだ。
白と黒の光がらせん状に交差する。中心にはルミオが立っていた。
「今は悩みません、ともに戦いましょう!!」




