第49話
「大分息巻いているが簡単に行くといいのお」
ハルシウスがかっかっかと笑い、溶けた柵を乗り越えて牢の中に入る。
「ほう、また負けるのが怖くはないのか」
無限の書を仕舞い、柄まで硬質化した斧を両手に持つ。
「わしは何度も同じ相手に後れは取らぬ。お主は最早眼中にないから安心せよ」
「っじゃあ知らず知らずにやられな!!」
ウェルドレッドが斧を振り上げて向かってきた。ハルシウスに向かって勢いよく斧を打ち付ける。ハルシウスはダークネスロッドを前に出して斧を防ぎ、大きな音が弾ける。竜が静かに翼を広げた。
「……あの竜は大分やせ細ってるようじゃのお」
杖を振り上げてウェルドレッドの斧を上に弾く。左手を前に突き出すと、手から放射状に電撃が放たれる。
「確かに前見た時より肉が減ったな。だがそれがどうした!!」
電撃はウェルドレッドの強固な体に傷一つつけられない。ハルシウスが背後の気配に気づいて咄嗟に後ろを向く。羽は光をいっぱいに集め、より白く、神々しく輝いている。ハルシウスがその場から離れようとするが、ウェルドレッドが道を塞いだ。ダークネスロッドでウェルドレッドの身体を打つが、耐久力が高く、なかなか退かない。
二人が射線上に重なった瞬間、竜が弱弱しく鳴くと、両翼から光が放たれた。ハルシウスは一瞬の気を取られて腕を掴まれる。光が二人を襲う直前にウェルドレッドは手を放して後ろに飛んだ。ハルシウスは回避が間に合わずに飲み込まれる。光は二人を通り過ぎ、地下を一直線に照らした。
光が消えると同時に、ルミオは目を開いた。虚ろな目で周囲をゆっくりと見回す。竜の足元から真っすぐに二本の地面がえぐられた跡が残っている。ウェルドレッドがそれを見て叫んでいる。
「俺を狙うな! 燃やすぞ!!」
無限の書を取り出すと、地面に叩きつけた。近くでうめき声が聞こえる。顔を向けると、ハルシウスが目の前で倒れていた。全身が傷だらけで、立ち上がれずにこちらに這ってくる。乾いた声でルミオに話しかけた。
「ようやく、目覚めたようじゃの」




