三人目が来た。
テレビ放送があってからお店は大繁盛だ。
普段なら暇な平日も、日持ちのする焼き菓子まで完売。
テレビの力ってすごいんだなぁ、としみじみと思う
松江さんも東さんも大張り切りで、いつもより多くシフトに入ってくれている。
佐倉さんは頻繁に僕を連れ出すようになった。
勿論勇者を探すためだ。
あちこち連れ回り、やみくもにステータスを覗けとせっつくのだ。
そんな効率の悪いやり方で見つかるんだろうか・・・
はなはだ疑問だが、他に良い案があるのかと言われても、何もないので黙っている。
土日は店の終わる時間に、迎えに来ることさえある。
かおりさんにはすっかり恋人だと誤解されている。
佐倉さんは佐倉さんで「なるほど。恋人だと誤解されていれば楽だね」なんて言っている。
今日はもうすぐ店じまい。
佐倉さんはイートインコーナーでケーキセットを食べている。
かおりさんが「ほほえましいわぁ」って感じの生ぬるい目で僕を見ている・・・
入口にクローズの札を出し佐倉さんに店を出るよう声をかける。
かおりさんが
「店内で待っててもらったら?」
と声をかけると、佐倉さんは
「ありがとうございます」
とあっさりと店内に残ることを決めてしまった。
松江さんが店内の掃除をしている。
僕はレジのしめ作業をする。
かおりさんは最後のお客さんである佐倉さんのテーブルと食器を片付ける。
塩野さんと桧山君は厨房で今日の片付けと、明日の相談や準備。
僕らが店を出ても、二人はもう少し後まで残っている。
店内側の作業が終わり、厨房に声をかけ、佐倉さんと店を出る。
松江さんが「いいなぁ~」などと言っているが、無視する。
全然いいことなんかないんだよ・・・
「おい。ガイドとやら」
店を出るなり僕は見知らぬ男性に声をかけられた。
その呼び方に佐倉さんの目が光る。
「探したではないか。その上私を待たせるとは何事だ。
明日から案内を頼むぞ」
返事をしたくない僕をよそに、佐倉さんが嬉々として答える。
「とりあえず今から飲みに行こう」
「うむ。主も私と似た身の上か。
話してみるのも良いかもしれぬな」
僕の意向は無視され、三人で居酒屋へ行くことになった。
いや意思表示していないのだから、無視されたわけではないのか。
意思表示するだけ無駄そうだけど。
「私の名は司裕樹。もとはドラゴンであった」
司さんは簡潔に自己紹介をする。
「私は佐倉ツバキです。ドラゴンですか・・・
私は元勇者です」
心なしか佐倉さんが気圧されているようだ。
「おいガイド。お前の名は?」
元ドラゴンの司さんは、偉そうだ。
「深山です」
「うむ。深山。主は私の為の内役なのだ。
私に仕事を与えろ」
司さんは偉そうにそう言った。




