そのトイレで屁を出すな
出社中、電車の乗り換えのため、一度改札を出た。
会社が違う鉄道だからどうしようもないが、改札くらい近くに作ってくれよ。
内心愚痴りながら乗り換え先の改札へ向かう。
しかし、不幸という物は突然襲いかかってくる。
ぐ・・・ぐるるるるるる・・・きゅううう・・・
は、腹が突然痛くなってきた。
やばい、非常にやばい!
俺は近くの公衆トイレ目掛けて走り出した。
あ・・・走ったら余計に。
俺は全力でゆっくり歩いた。
目的のトイレまであと少し。
中に入ると大の方は空いていた。
ラッキー!
日頃の行いが良いから、こんな時に現れるんだな。
俺は個室に雪崩れ込み、扉の鍵を掛けて鞄を扉の所にあるフックに吊るし、電光石火でズボンとパンツを下ろした。
セット完了!
いざ、便器へ。
流石ここの公衆トイレは違う。公衆トイレでありながらも便座が暖かくて気持ちがいい。 凄いぞ日本の技術力!
俺は感動に打ち震えながら体の奥底から流れてくる激流に、身を委ねるところだった。
そろそろだ、そろそろ来るぞ! 激流が、外界を求めて流れてくる気配を感じた。
暗く長い洞窟を、光を求めて溶岩のごとく火口から吹き出すのだ!
ブウゥゥゥゥゥ~・・・・・・プゥ。
「くっせえええええええええ! 何食ったらこんな屁が出るんだよ!」
突然の声に驚いたのもそうだが、俺は何故かお尻を蹴飛ばされてトイレから追い出された。
「は?」
さっき個室に入ったとき鍵も閉めたはず。
それにどこから蹴り飛ばされた?
俺はズボンとパンツを引きずりながら個室に入り直し、鍵を掛けたのを確認して、再び便座に腰を下ろそうとしたが、一応確認はしておこう。
「なんともないよな?」
個室の中を見渡し、さらには這いつくばって便座の下も確認した。
そして恐る恐る便座に座る。
少し安心したら、体の中から再び迫り来る感触に力むのだった。
ボフン・・・
「マジで臭え! ふざけんな!」
俺は再びトイレから蹴られるように追い出された。
「な、なんなんだよ! このトイレは! ふざけんな! 用を足させろよ! 限界なんだぞこっちは!」
俺はトイレで順番待ちをしていた人たちに目もくれず、便器に怒鳴り散らした。
「そっちがその気なら、こちらにも考えがある!」
俺は再び個室に入り込み、逆向きで座り、タンクにしがみついた。
「これならどうだ! これで追い出されないぞ!」
三度目だ、腹の奥底の暗闇から奴らが迫ってきた。
ぼふ~ん・・・。
「ぎゃあああああ! てめー! いい加減にしやがれ! くせーんだよ!」
俺は意地でもタンクから離れない。
が、奴は違う手口で襲ってきた。
ウォッシャーが動き出し、こともあろうに、熱湯が俺の大事な息子を目掛けて勢いよく吹き付けられた。
「あちいいいいいいいいい!」
俺はあまりの熱さにタンクから手を離したら何かに弾き飛ばされて個室から追い出された。
もはや俺 VS 便座の戦いだった。
俺はズボンもパンツも履くのを忘れ、モザイク案件状態で個室に怒鳴っていた。
そんな時、入り口から警官が現れた。
「君かね? トイレでわめき散らしているというのは。 通報があったから来てみれば・・・、君、トイレに向かって何叫んでるんだ?」
俺は警官にズボンを履いたら一緒に行こうかと言われ、最寄りの交番まで連れて行かれた。
覚えていろよ! あの糞トイレ!
そのトイレで屁を出すな 完




