ちょうのうりょく少年
ここは特殊な能力を持つ子供達が集められた学園。
ここに一人の男子生徒が通っていた。
その名も酢語彙 宇悩。
彼は生まれた時からその能力を発現していた。
その力は年を重ねて行けば行くほど力を増した。
「あなたが噂の人ね? 名前は?」
突然知らない女が酢語彙に話しかけてきた。
「人に名前を聞く前に、自分から名乗れよ」
女は一瞬むくれたが、気を取り直して名乗った。
「そうね、失礼したわ。 私は鮫田 佐納よ。 この学園の理事長の娘よ」
女はそう名乗った。
「俺は酢語彙 宇悩だ」
「酢語彙君は凄い超能力があるって噂だけど、実際どうなの? 私は見てみないと信じない質なの」
めんどくせー女に絡まれたと酢語彙は己の運の無さに呆れた。
そう、酢語彙 宇悩は能力と引き換えに運がなかった。
例えば空間認識と直感で危険を察知して、避けようとしてもそこにある犬の糞を踏んで転んで顔に糞が付いたり、歩道橋から物が落ちてくると感じてそこで伏せると、階段を降りてきた女性のスカートの中を見てしまい思いっきり踏みつけられて警察に連れて行かれたりと散々な目に遭っていたのだ。
いっそこの能力が消えてしまえと何度も思っていた。
そして輪をかけたようにもう一つ厄介なのが具現化能力――。
鮫田は酢語彙に近づいてくる。
豊満な胸を揺らしながら。
それに反応しない若い男はいない。
酢語彙はそのぷるんぷるんの胸を見ながら想像した。
「聞いているの? 酢語彙君」
鮫田が酢語彙に話しかけていたとき、周りを歩いていた男子生徒達がスマホを取り出し、写真を撮りだした。
それに気がついた鮫田が言った。
「貴方たち、勝手に写真撮らないでくれますか?」
そんなことは聞いちゃいない男子生徒達。
鮫田はおかしいと思い、周りを見て、最後に自分の後ろを見るとそこには――。
悩ましい姿で胸を強調している自分の詳細な姿が浮かび上がっていた。
鮫田は酢語彙に向き直り掴みかかった。
「貴方の仕業ね! どうしてこんなことをするのか説明を求めるわ!」
求めると言った鮫田は酢語彙の頬を何回もひっぱたいていた。
「それよりも早く消して! 貴方たちも後でそのデータを消して回るから覚悟しなさい! 全員の顔を覚えたから! もし消さないなら法的に訴えて、全員前科持ちにしてあげるわ!」
そんな登校時間のささやかな出来事であった。
*
酢語彙は教室に入って席に座った。
すると一人の男子生徒が笑顔で挨拶をしてきた。
「おはよう、宇悩。 なんだか今日はいつにも増して男前じゃん」
男の名前は他聞 魔児萌堕。
酢語彙の悪友だ。
「お前はこの顔を見た感想がそれか?」
「おうよ! で、今日は何をしでかしたんだ?」
どうやら他聞は朝の騒動を知らないらしい。
少しほっとした酢語彙。
だがトラブルは向こうからやってきた。
「酢語彙君! いきなり逃げ出すなんて何考えているのか説明してちょうだい! それとさっきのことも含めてね!」
なんで来るんだよと思う酢語彙。
「おいおい、学園のマドンナの鮫田さんじゃないか! お前なにしたの?」
他聞が聞いてきたが、そんないいもんじゃない。
いや、いい物をお持ちだったからこそだ。
迫り来る鮫田。
豊満な胸を揺らして。
どうにもこうにも視線がそこへ向かってしまう。
酢語彙はやばいと思ったが、時すでに遅し・・・。
教室中に鮫田の下着姿、悩ましいポーズがよりどりみどり状態で、さっきよりもより詳細に、より精密に具現化してしまった。
そして空間認識と危機感値が反応した時に、鮫田の右ストレートが酢語彙の顔面に直撃し、吹き飛ばされた。
「なななな、なんなのこいつ! 信じられない!」
鮫田は具現化された自分を即座に分析し、殴れば消えると導き出したようで消しまくっていく。
「覚えていなさいよ! 酢語彙!」
鮫田は大変ご立腹状態で自分の教室へ戻っていった。
「なるほど、お前が男前になったのは彼女が原因か。 でだ、物は相談だが、今日家に寄ってくれないか?」
酢語彙は何でだと聞くと。
「家に一体鮫田のえっろえろポーズを具現化して置いてくれないか?」
そんな事を言った他聞に、どこからともなく飛んできた分厚い辞書が、他聞の股間に直撃した。
まったく、どうしてこんな能力なんだよ・・・。
酢語彙 宇悩の学園での苦悩は始まったばかりだ。
ちょうのうりょく少年 完




