魔王、15分で撃破 ~そして絶望の真実~
「貴様ら、本気で我を倒せると思っているのか!」
魔王ザルゴスが玉座から立ち上がる。
身長三メートル。溢れ出す魔力が空間そのものを軋ませた。
「思ってる。成功率82%」
「82%だと? 何を根拠に――」
「黙ってろ。マリア、精神攻撃!」
「【絶望の囁き】!」
放たれた精神魔法が、魔王の思考をわずかに乱す。
「ぐっ……小癪な……!」
「エリス、聖属性付与!」
「はい! 【聖光の加護】!」
マリアの槍が神聖な輝きを帯びる。
「俺が核の位置を指示する。三秒後、魔王は右腕を振り上げる。その瞬間、左胸が0.2秒だけ無防備になる」
「0.2秒って……!」
「できる。俺の見る未来を信じろ」
三、二、一――
魔王が右腕を振り上げた。
「今だ!」
閃光。
マリアの槍が左胸を正確に貫く。
「ガアアアアア!!」
「まだ浅い! 核はさらに奥だ! エリス、槍に魔力を集中!」
「【魔力増幅】【魔力注入】!」
眩い光が槍を包み込み、貫通力を増す。
刃はそのまま体内深くへ――そして魔核を粉砕した。
「バ……カな……我が……人間ごときに……」
巨体が崩れ落ちる。
『討伐完了
獲得経験値:Lv58→Lv99(上限到達)
獲得スキルポイント:5000pt
【万能解析】Lv7→Lv15』
「やった……やりました!」
エリスが歓声を上げる。
マリアは呆然と立ち尽くしていた。
「本当に……倒したのか」
討伐時間、十五分。
史上最速の魔王討伐。
「これで……帰還解析が――」
その瞬間、脳内に情報が流れ込む。
『帰還方法解析完了:100%
結論:不可能』
「……は?」
『詳細結果
召喚魔法は一方通行
逆転移成功率:0.000001%
必要魔力量:この世界の総魔力の500倍
結論:物理的に実行不可能』
膝から力が抜けた。
「嘘だろ……」
「ケンタさん!?」
「帰れない……やっぱり、帰れない……」
Lv15の【万能解析】が導き出した答え。
それは、完全な否定だった。
「じゃあ……何のために……」
乾いた笑いが喉からこぼれる。
「無駄だったんだよ。最初から帰る方法なんてなかった」
マリアが肩を掴む。
「しっかりしろ!」
「できるかよ……もう帰れないんだぞ……」
月曜のプレゼン。
レイドイベント。
録画したアニメ。
待っている猫。
全部、終わりだ。
そのとき。
「フフフ……気づいたか、人間よ……」
魔王の残留思念が響く。
「魔王!?」
「最期に教えてやろう……この世界の真実を」
空気が震える。
「召喚魔法には、ただ一つ例外がある」
「例外……?」
「この世界を“完全にクリア”した者のみ、元の世界への扉が開く」
「完全にクリア? 魔王討伐じゃないのか!?」
「魔王など序章に過ぎぬ。真のラスボスは……別にいる」
【万能解析】が反応。
『緊急解析:隠されたクエスト
真の敵:【世界の管理者】
討伐条件:全ダンジョン制覇/全スキル習得/全隠しボス撃破
達成者:過去300年で0人
報酬:元の世界への帰還権』
「管理者……?」
「この世界を創り、召喚を司る存在。それを倒さぬ限り、貴様は永久に囚われる」
「どこにいる!?」
「フフ……それを探すのも試練だ……」
思念は消滅した。
沈黙。
俺は立ち上がる。
「……まだ終わってない」
「ケンタさん……」
「ラスボスがいるなら倒すだけだ」
エリスが震える声で言う。
「でも、全ダンジョン制覇って……この世界には百以上あるんですよ!?」
「全部攻略する」
「無理です! 一生かけても――」
「俺は普通じゃない。【万能解析】がある」
マリアが苦笑する。
「……本当に帰ることしか頭にないんだな」
「当然だ。諦めたら全部無駄だ」
二人を見る。
「ここからは俺一人で――」
「バカ言うな」
マリアが槍を構える。
「ここまで来て降りられるか。私も帰る約束だろ」
エリスも杖を握った。
「私も行きます。召喚者が帰れる道、絶対見つけたいんです」
「……ありがとう」
【万能解析】で次の目標を設定。
『新規クエスト:世界完全攻略
残りダンジョン:97
隠しボス:12
必要スキル:残り200種
推定最短達成期間:90日』
三ヶ月。
長い戦いになる。
それでも――
「絶対に帰る。何があっても」
こうして、俺たちの本当の戦いが始まった。




