追放勇者パーティーとの遭遇
魔王討伐の報酬として、王国から爵位と領地が提示された。
「全部いらない」
「え……?」
国王が目を丸くする。
「代わりに、全国のダンジョン情報と詳細地図、それから高速移動用の魔道具をくれ」
「そ、それだけでよろしいのですか?」
「ああ。俺には時間がない」
こうして最低限の報酬だけ受け取り、俺たちは次の目的地へ向かった。
「次は東大陸の【竜骨迷宮】だ」
馬車の中で地図を広げる。
「そこ、Sランクダンジョンですよ!? Sランク!
情報も少ないし、異常に難易度が高いって有名です!」
「だから行く。隠しボスがいる可能性が高い」
マリアが深くため息をつく。
「本当に休む気がないな」
「休んでる暇はない。残り97ダンジョンだ」
そのとき、馬車が急停止した。
「何だ?」
外を見ると、道を塞ぐように五人の冒険者が立っている。
「おい。お前らが魔王を倒したサトウのパーティーか?」
リーダー格の男が剣を抜いた。
『分析開始
・リーダー:レオン(元勇者/Lv72)
・メンバー:全員Lv60以上
・状態:敵意あり/目的不明』
「そうだけど。何か用?」
「あるさ。俺たちを差し置いて魔王を倒したらしいな」
「差し置いてって……お前ら、討伐隊だったのか?」
「“元”だ」
レオンが吐き捨てる。
「俺たちは王国公認の勇者パーティーだった。だが新人のお前らが先に魔王を倒したせいで、“用済み”って追放だ」
……なるほど。逆恨みか。
「気の毒だけど、俺たちには関係ない」
「大ありだ! お前らのせいで俺たちは職を失ったんだぞ!」
「知らんがな」
レオンの顔が紅潮する。
「ふざけるな! 俺たちは十年も準備してきたんだ! それを一週間で横取りしやがって!」
「早い者勝ちだろ」
「てめぇ!!」
斬撃が迫る。
『戦闘パターン解析完了
・剣技:7種
・全回避可能』
紙一重で躱し、顎へカウンター。
「がっ!」
レオンが吹き飛ぶ。
「リーダー!」
仲間が一斉に襲いかかるが――
三秒後、全員地面に転がっていた。
「つ、強い……」
レオンが震えながら見上げる。
「レベル99……なのか?」
「そうだけど」
「化け物かよ……」
俺は淡々と言う。
「魔王討伐は目的じゃなかった。帰るための手段だ。お前らとは前提が違う」
「帰る……?」
「俺は召喚者だ。元の世界に戻るには、あと97ダンジョン攻略が必要だ」
「97……? 本気か?」
「本気だ。だから構ってる暇はない」
踵を返す。
「待て!」
レオンが叫んだ。
「俺たちをパーティーに入れてくれ!」
「は?」
「追放されて行き場がない。でも、まだ冒険者として終わりたくない。お前の目的、手伝わせてくれ!」
『分析:本心85%/打算15%』
「足手まといになるぞ」
「それでもいい!」
マリアとエリスを見る。
二人は肩をすくめた。
「……荷物持ちくらいにはなるかもな」
「本当か!?」
「条件がある。俺のペースについて来られなければ即解雇。文句は禁止だ」
「了解!」
こうしてパーティーは八人になった。
多少は効率が上がるかもしれない。
「出発する。【竜骨迷宮】まであと二日」
「二日!? 普通は一週間かかるぞ!?」
「俺は普通じゃない。走る」
「馬車で!?」
「馬車は遅い。【飛行】で行く」
「ええええ!?」
追放勇者パーティーの悲鳴を背に、俺たちは空へと飛び立った。




