28 乗り込み
「みなさん、これを見ていただいてもいいですか?」
「うん? なんだい?」
遺留品を確認するミカエル達へ歩み寄ると、イズミはスケッチブックの一枚目に描かれた絵を見せる。そこに描かれていたのは、ガッチリとした骨格の男性で、歳は三十過ぎだろうか。野性的な雰囲気に鋭い眼差しを持つその男性は、どう見ても一般人ではない。冒険者、もしくは傭兵のような印象だった。
「実に見事な絵ですね。これは?」
「同調スキルで見た襲撃犯の顔です」
その言葉にクレインが目を見張り、スケッチブックからイズミへ視線を移す。
「襲撃犯の顔? ……まさか、こんな細部まで見えていたんですか?」
「ふふ、バッチリです。道中は覆面で顔が見えずに困ってたんですけど……ここに来て着替えのために顔を晒してくれたので、襲撃犯の顔を一人残らずスキルで転写しました!」
イズミは満面の笑みで答え、グッと親指を立てた。
「なっ……」
「く……ッ、クク、ハハハッ!!」
「わ、笑い事じゃありませんよ、ミカエル」
「いやいやクレイン、これがどうして笑わずにいられる!? 君は本当に素晴らしいな、イズミ嬢!」
「え、ええ、とても。奴らもわざわざ変装したというのに、こうもアッサリ顔がバレたとは夢にも思わないでしょうね……、ふふ、っ」
ミカエルは腹を抱えて豪快に笑い、ラファエルは手で口元を隠しながら肩を震わせている。
悪人の努力をぶち壊すことの何と気持ちの良いことか。
してやったイズミとしては、実に清々しい気分である。
よほど痛快だったようで、ミカエルは「ああ、ダメだ。イズミ嬢に惚れてしまいそうだ」と、笑いすぎて溢れた涙を拭いながら呟いている。恐らく、きっと、たぶん、冗談だろうけれど。
しかし、ここは顔だけで身元が特定できるほど便利な世界ではないのだ。
続けてイズミは、スケッチブックの最後のページに転写した図柄をクレイン達に見せた。
「ちなみに、この紋章? なんですけど……見たことはありますか?」
そこには、記憶の中でリーダー格らしき男が着替えた装備に描かれていた紋章らしき図を転写してある。円の中に犬か狼のような動物が描かれた特徴的な柄だ。騎士はもちろん、巡察をするという高貴な百合もどこかで見たことがあるのではないかと思い、スケッチブックを差し出した。
すると、
「この紋章は……。イズミさん、これも記憶の中で?」
「はい。男が着替えた装備に描かれてました」
クレインは「そうですか」と呟くと、険しい面持ちで黙り込んだ。
リーダー格らしき男が着替えた装備の胸元に、この紋章は描かれていた。十中八九、家系や組織を識別するための意匠と思われるので、リーダー格らしき男がどこに所属しているのか分かるはずだ。人相書きと合わせれば確実に特定できるだろう。
案の定、クレインの隣で紋章をまじまじと見つめていたミカエルが溜息交じりに呟いた。
「なるほどねえ、ゴベール子爵か」
「ゴベール子爵?」
「我々の拠点であるダンジョン都市は公爵領ですが、その南隣には伯爵領があります。その領境、伯爵領側にある街【コペール】を治めているのがゴベール子爵です」
「彼とは以前、トラブルがあってね」
子爵の治める街はダンジョン都市に近く、冒険者や商人、旅行客が利用することもあり伯爵領でもかなり栄えている街なのだそう。
そのため子爵の懐は潤沢で、私兵はもちろん奴隷を買うだけの余裕もあるらしい。
高貴な百合は以前、伯爵領を巡察中に奴隷女性達を救出したことがあるという。偶然取引現場に遭遇し、その買主がどうやらゴベール子爵だったそう。
売買が成立する前で証拠がなく、「現場を押さえに来たのだ!」と言い逃れされてしまったものの、誰がどう見ても完全な黒だったという。
「あの件での逆恨みと考えれば、まあ、納得かな」
「あの手の輩が考えそうなことですからね」
察するに、子爵としては大枚を叩いて買った奴隷を横取りされたような気分だったのだろう。
王国国民は奴隷の所有を禁止されているため、傍目から見れば違法な上に逆恨み以外の何でもないのだが。
「ということは、今回の黒幕は子爵ですか?」
「どうでしょう……。黒幕が子爵とは断言できませんが、私兵と思しき者の身に着けていた紋章はゴベール子爵家のものですし、少なくとも子爵の私兵が関与していることは間違いないですね」
「同感です。子爵から直接話を聞くためにも、このまま伯爵領へ向かいましょう。今から向かえば夜には着くはずです」
「了解。イズミ嬢もいいかな?」
「もちろんです。行きましょう!」
そうして、移動を再開。
森を抜けたところで最後にもう一度、同調を使用した。
すると、襲撃犯である男達が街道で合流した馬車へ乗り込んでいく場面を確認することができた。カモフラージュのためか、馬車はシンプルな作りで紋章などは描かれていなかったものの、その一つに取り分け豪華な服装の男が乗っているのがチラと見えた。
調査隊の面々に特徴を伝えたところ、十中八九子爵だろうとのことで、これで主従揃っての関与が濃厚となった。
途中何度か休憩を挟みつつ、馬を走らせること半日以上。
最後の休憩場所でワラビと共に水分補給をしていたイズミは、ミカエルの告げた作戦に驚いた。
「え? みなさんは街に入らないんですか?」
「ああ。イズミ嬢には護衛を数名着けて宿に泊まってもらうつもりだが、騎士と我々が街へ入れば子爵に伝わってしまうだろう。逃亡を防ぐためにもこちらの存在を知られてはならないからね」
確かに、騎士と高貴な百合が揃って街へ入れば事件の調査で来たと言っているようなものだ。来訪がバレれば子爵と私兵は逃亡するかもしれない。逃げられるだけならまだしも、最悪、私兵を処分される可能性だってあるだろう。
実行犯を確実に捕えたいこちらとしては、逃亡する隙を与えてはならないことは確かだ。
「騎士団と我々は明日の朝一で別々の門から街へ入り、イズミ嬢と合流して子爵邸へ奇襲をかける。それまでは警戒されないよう街へは入らない、というわけだ」
「なるほど、分かりました。明日、なんとか証言を引き出せるといいんですけど……」
あれよあれよという間に進む展開に、イズミは僅かな不安を覚える。
一般に広く知られている既存スキルと違い、イズミの使ったスキルは唯一無二だ。
ゆえに現状、残念ながらイズミのスキルだけでは決定的な証拠にはなり得ない。特に同調のようなスキルは、使用者であるイズミ本人しか効果を実感できない。そんなスキルは聞いたこともないと突っぱねられてしまえば、強く言い返すことができないのだ。
そのため、向こうからの証言を得る必要があった。
「ハハ、イズミ嬢のお陰で余裕だろう」
「え?」
「向こうからの連絡次第ですが……まあ、大丈夫でしょう」
「ふふ、後は我々にお任せください」
「???」
自信たっぷりに告げるミカエル達に、イズミは首を傾げる。
どういうことかと尋ねても、今は秘密だと微笑むばかり。
まあ、自分よりよほどしっかりしたミカエル達がそう言うなら問題ないのだろうと、イズミは最後の移動へ向けて暫し体を休めた。
それから数十分後。
クレイン達と別れたイズミと高貴な百合の護衛役は、問題なくコペールの検問を通過して街へ入った。
伯爵領と言えど王国内だけあって、街の雰囲気はダンジョン都市と変わらない。規模こそダンジョン都市と比べると数段下がるが、行き交う人は多く活気もあって、傍目には良さそうな街だった。
そんな光景を前に、こんな時ではあるがほんの少しワクワクしてしまう。
仕事を終えた人々が楽し気に飲食店へ入って行く様は、夜はこれからなのだと実感させられて、イズミもワラビと共に美味しいものでも食べに街を散策してみたくなってくる。
しかし、コペールへ来たのはあくまでも仕事のため。
何より今日はほぼ一日馬に乗りっぱなしであったため、体はくたくただ。正直、お尻は痛いし(継続回復をかけていたため大惨事には至っていない)脚もガクガクしている。
襲撃犯を突き止めた時点でイズミの仕事はほぼ終わったと言っても過言ではないが、まだ手伝えることもあるだろう。いざという時に助力できるよう、今日は早く休んで体力を回復させるべきだ。
ほんの少し後ろ髪を引かれつつ、街を知る高貴な百合の面々に宿への案内を頼む。途中、ミカエルに頼まれていた仕事もあって、冒険者ギルドへ立ち寄った。
目的はもちろん、情報収集だ。
国から独立した組織であるギルドは国や領主におもねる必要もないため、どのような情報でも教えてくれる。例えばそう、街の代官である子爵の動きに私兵の数、容姿、素行なども。
もちろん場所によっては領主や代官などと通じている場合もあるが、巡察であちこちを回っているミカエル達いわく、コペールのギルマスは好人物であるそうなので問題はない。しかも、ギルドにとって貴重な人材である高貴な百合が襲撃されたのだ、喜んで協力してくれるだろう。
コペールのギルドは、ダンジョン都市のギルドと比べてこじんまりとしていた。
と言ってもダンジョン都市のギルドが大きすぎるだけで、民家三軒分ほどの広さがあるギルドは極々一般的な大きさなのだそう。中の造り自体は同じであるため、イズミが依頼人のフリをして高貴な百合を連れ、受付へ行く。
すると、極々自然な流れで客間へ通され、コペール支部のギルマスから話を聞くことができた。
何でも、イズミが襲撃犯と証拠を見つけ出したあと直ぐに、クレインが調査隊の一部の騎士と冒険者をダンジョン都市へ戻し、通信の魔道具にてコペールの騎士団やギルドへの協力、それと調査依頼を取りつけていたらしい。
流石、調査隊の責任者を任されるだけあって有能な人物なんだなぁと、イズミは感心した。
イズミが転写した絵の男達は、ほぼ全てが子爵の私兵として屋敷で働いているらしい。傭兵上がりの乱暴者ばかりで、権力を笠に着て問題を起こしたことも一度や二度ではなく、ギルドにとっても悩みの種だという。
数日前には、交流のある貴族との面会に出かけるという子爵について行ったらしい。やけに大荷物で、馬車を何台も引き連れて行った割にはアッサリと帰還したため、不審に思っていたのだそう。
とはいえ、流石に高貴な百合の件に関わっているとは思わなかったようで、コペール支部のギルマスも驚いていた。それと同時に自分事のように憤慨し、全面的な協力を約束してくれて、コペールの騎士団や外にいるミカエル達との連絡役なども請け負ってくれた。
ギルマスがこうもアッサリ信用してくれたのは、クレインの手配や高貴な百合の実績があってこそだ。イズミだけでは到底信用してもらえなかっただろう。やはり信用に足る実績の積み重ねは大事だなとつくづく思う。
これから増々頑張らなければと、イズミは密かに気合いを入れた。
ちなみに、騎士団や冒険者ギルドには手紙などの小さな物なら送受できる魔道具があるそうで、高貴な百合が襲撃された件については既に国内全ての騎士団とギルドが情報を共有しているらしい。コペールにも昨日の早くに連絡が来ており、ゆえに今もスムーズに話が通ったのだった。
アッサリと話がまとまり安堵したイズミは、高貴な百合に促されたこともあり、早々にギルドをお暇して宿へ直行する。
高貴な百合のお勧めは、女性冒険者や旅行客で賑わう綺麗な宿だった。
宿の食堂で夕食を済ませ、護衛のため大部屋を取って高貴な百合の面々と同室で休む。家族以外と同室で寝たことなどなかったイズミは、林間学校へ行くことができていたらこんな感じだったのかなと、少しだけふわふわした心地で眠りについた。
◆
日中勤務の社会人は早朝の在宅率が高い。
そのため、逮捕状を持った警察がやって来るのは平日の早朝なのだ。
寝起きで頭が働いていないことに加え、早朝から人が尋ねてくることなど滅多にないため油断しているという点も大きい。もちろん他にも警察側の都合もあるのだろうが、実に理に適っているなとテレビの警察〇〇時を見てイズミは思ったものだ。
なぜ今そんなことを思い出したのか。
と言うと、
「……そ、それで? ダンジョン都市の騎士と、有名な冒険者諸君が早朝から私に何の用かね?」
まさに目の前で、バスローブ姿の子爵が盛大に頬を引きつらせているからである。
イズミ達は昨日打ち合わせた通り、早朝に街中でミカエル達と合流したその足で子爵邸へやって来た。コペール支部のギルマスの手筈で既に子爵邸は騎士団に包囲されており、子爵はもちろん、住み込みの私兵達が逃げる隙もない。
知らぬ間に追い込まれていたら焦りもするだろう。
事実、小さく、ふくよかで、毛量が控え目という少々残念な特徴の子爵は、任務地の異なる第七支団の騎士と高貴な百合が一緒にやって来たことに明らかな動揺を見せている。広すぎる額からはタラタラと汗を垂らし、分厚い瞼のせいで細い目を忙しなく動かしていた。
久し振りに見る現実的な容姿の子爵に、こんな時ではあるがイズミはどこか親近感を覚えてホッとしてしまう。周りの人間が美形ばかりだと、やはりここは天国なのではとつい疑ってしまうのだ。
まあ、子爵を見る限りここはちゃんと現実だったようだが。
イズミがそんな場違いな思考を巡らせている側で、話は進んでいく。
「突然の訪問、ご容赦ください。緊急の案件で子爵に伺いたい事がございまして」
「ほほう、私に? 何かね。協力なら惜しまんよ」
「ありがとうございます。でしたら先ず――彼らに話を聞く必要がございます」
クレインが視線を向けた先。
そこには私兵の男達がいた。
騎士の指示で子爵家の家令に集められた男達は早朝ゆえにみな寝間着姿で、寝惚け眼な者もいれば現状を飲み込めずにキョロキョロしている者もいる。特に、イズミが記憶の中で見たリーダー格らしき男――私兵の中でも特に屈強な体躯に鋭い眼光を持つその人物は、警戒しているのかこちらを睨むように見つめていた。
「彼らは我が家の護衛だが、一体何を聞きたいのかね?」
「簡単な話ですよ。一昨日の晩、彼らがどこで何をしていたのか、です」
ミカエルがクレインの隣へ歩み出て尋ねる。
寝間着姿の私兵達と違って、完全武装状態の騎士と高貴な百合が相手だ。しかも、子爵が今のところ下手に出ていることもあり下手な抵抗は無意味と悟ったのか、リーダー格の男は渋々といった様子で口を開いた。
「一昨日の晩でしたら……ゴベール様の護衛で街にはおりませんでした。移動の最中で、ちょうど街道を通っていた頃じゃないですかね」
「おお、そうだな! 他の街に住む友人のところへ行った帰りでな、彼らには護衛として一緒に来てもらっていたのだよ。それがどうかしたのかね?」
私兵の男の話に、我が意を得たりと子爵が頷いた。
しかし、歩み出たラファエルがさらに問いかける。
「それは何処の街道でしょう? お会いしたご友人の名は? お住まいはどちらです?」
「…………なぜ、そこまで言う必要があるのかね?」
容赦のない問いに子爵は広い額に青筋を浮かべ、口元を引きつらせる。
ミカエル達のことだからと心配はしていないが、やり取りには多少ハラハラしてしまって、端の方で眺めているイズミはまるでテニスの観戦者のように顔を交互に向ける。胸元に抱かれたワラビも、イズミにならい顔を右へ左へと向けている。たぶん、意味はない。
心を静めるためか額を拭う子爵の下へ、クレインが歩み寄った。
「こちらを見ていただけますか?」
イズミが渡していたスケッチブックを開き、その絵を子爵に見せる。
「ん? 何かね……おお、これは見事な腕前だな! うちの護衛にそっくりではないか。まるで生き写しだ!」
「私もそう思います。この絵ですが、実は一昨日起きた事件の目撃者が提供してくれた襲撃犯の人相書きなのです」
「そうかそうか! どれもよく描けて……ん?」
スケッチブックを覗き込み、その画力に感嘆の声を上げた子爵はしかし、クレインの言葉に眉根を寄せる。そして、
「襲撃犯の人相書き……だと?」
「その通りです」
「バカな! そんなことはあり得ん!! この者らは私と共に外出していたと言ったはずだッ!」
椅子を揺らして立ち上がり、怒鳴った。
その怒気に私兵達はビクリと肩を揺らすが、騎士や高貴な百合の面々はまるで意に介さない。
「ええ。ですが、こうも見事な人相書きがあっては確認しない訳にはまいりませんので」
「バカバカしい! 大方、この絵師が偶然見かけたこの者らを描いたのだろう! 何ら証拠にはならん!!」
確かに、目撃者の証言を鵜吞みにはできない。目撃者の見間違えの可能性や、謝礼金目当てに適当な証言をする可能性、果ては個人的な恨みなどで無関係の人間を犯人だと吹き込む可能性だってなくはないからだ。
とはいえ、今回の情報提供者であるイズミには、どの可能性にも当てはまらないことをミカエル達は知っている。見間違え、もといスキルの信用性に関してまだまだ低いことは否めないが、少なくとも昨日の今日で子爵邸へ乗り込む程度には信用されているのだ。
それはやはり、ラウラの件が大きいのだろう。
逆に頭へ血が上ってきたらしい子爵は、最初の紳士的な対応はどこへやら。
「大体、その事件現場とやらはどこなのかね! ん!?」
「ダンジョン都市から西に伸びる街道です」
「そうかそうか! ならばこの者らではないなァ。なにせ我々は伯爵領内の街へ出かけていたのだからな!!」
本性全開といった様子で、ニタニタと厭らしい笑みを浮かべながら深々と椅子へ座り直した。
こちらを見下すように顎をツンと反らし、短い脚を組んで余裕をかましている。
しかしそれも一瞬で、
「残念ながら、彼らの雇用主である子爵の証言は証拠能力が低いのです。そのため、子爵がお会いしたというご友人や、その街の住人から証言を得る必要があります」
「な、なんだと!?」
至極冷静なクレインの反論に、子爵の顔が怒りで赤く染まった。
イズミは大人しく成り行きを見守りながら、頭の中で地図を思い浮かべる。
コペールのある伯爵領は、公爵領の南隣だ。
伯爵領内で一番公爵領に近い街がコペールであって、そこから伯爵領内の街へ出かけたとなれば、必然、南下することになる。ダンジョン都市へ向かうには北上することになるため、子爵がドヤ顔で私兵の犯行を否定するのも無理はない。
しかし、それはあくまでも子爵の証言を信用した場合に限れば、だ。
被疑者の雇用主の証言など信用性はないに等しいのだから、クレインの言葉はもっともだった。
調査の段階では子爵が関与しているのか不明だったが、私兵を庇う様子を見るに子爵も黒なのだろう。というか、襲撃も子爵が指示をしたに違いない。私兵達が独断で動くほどの人徳が子爵にあるとは思えないから。
「お怒りはごもっともです。しかし、こうして第三者の明確な目撃証言がある以上、無実を証明できない場合は公爵領へ連行し厳しく尋問するようにと“ラインフェルト公爵閣下”より仰せつかっております」
「な、なにっ!? ラインフェルト様が!?」
「左様です」
“ラインフェルト”。
その名が出た瞬間、子爵の顔が分かりやすく青褪めた。
お察しのことと思いますが、街の名前を考えるのが面倒でした…。




