【第四話】予想外の注目と祝杯
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
「スライムの魔石って、売り物にならないんですか?」
組合の換金所で私たちが素朴な疑問を投げかけた瞬間、周囲の冒険者たちがザワザワと群がってきた。
「いえ、逆です! スライムの討伐事例は東京で1件、京都ではゼロ。圧倒的に希少価値が高いんですよ!」
「あいつら、酸を撃ち込んできてビックリしてる間に逃げちまうからな。お前たち、酸にやられなかったのか?」
「はい、ギリギリで躱すことができたので……」
目立ちたくないのに、周囲の視線が熱い。すると、道中を共にしたあの先輩リーダーが、余計な口を挟んできた。
「いや、この2人はすげーよ! こっちのお姉さんはファイアーボールを使うし、こっちの剣さばきは達人レベルだ。15体のゴブリンをあっという間に倒しちまった。しかも今日が初日だぜ!」
やめてください、そんな大声で宣伝しないでください。心の叫びも虚しく、私たちはすっかり注目の的だ。
「2人はコンビなのか? パーティー名とかは決めてあんの?」
「パーティー名……ですか?」
厨二病なら絶対に避けて通れない魅惑の響き。ファンタジーの憧れ。私が妄想の世界に旅立ちかけていると、組合員さんが咳払いをした。
「お二人には、今後もスライムを積極的に討伐し、死体も回収してきていただきたいのです。研究の素材不足でして」
「わ、分かりました。倒せたら持ってきます」
逃げるように換金を済ませた私たちは、予想以上の臨時収入を手に、少し高級そうなレストランへと足を運んだ。予約なしで入れる程度の背伸びだけれど、美味しいコース料理とワインに心がおどる。
「それにしても、凄い騒ぎでしたね」
「魔法の効果は絶大でしたね。明日からは、ダンジョンで魔法を練習する覚醒者で溢れかえると思いますよ」
なにしろ、魔法は全人類の憧れなのだから。
入るのにあれほど勇気が必要だったダンジョンが、今は明日が待ち遠しくてたまらない。明日は、どんな新しいクリーチャーに出会えるだろうか。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




