【第二十一話】魔法の特訓と、魔法使いの進化
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それでは、本編をお楽しみください!
「ねえ、しおんさん。次のモンスターが出るまで、しおんさんも少し魔法の練習をしてみたら?」
薄暗い通路を歩いている最中、あんさんにそう提案されて私はハッとした。
確かに、レベルが上がって筋力や敏捷は跳ね上がったけれど、私のMP(魔力)は相変わらず少ないままだ。ステータスを確認すると、最大MPは「10」から「15」へとスズメの涙ほど増えただけだった。
「うーん……でも私、あんさんみたいにドカンッ!って大きなファイアーボールは撃てないよ?」
「だからだよ。あのサイクロプスの時に使った『目眩まし(フラッシュ)』、すっごく便利だったじゃない? ああいう搦め手をもっと練習しておけば、いざという時の手札になると思うの」
「なるほど……!」
あんさんの言う通りだ。威力が低いなら、デバフ(状態異常)や牽制に特化させればいい。
私は歩きながら手のひらに魔力を集めた。ダメージを与える熱量ではなく、ただひたすらに『光』と『破裂音』だけを大きくするイメージ。
「『ファイアーボール……フラッシュ』!」
ポンッ! パァンッ!!
通路の中で、強烈な閃光と大きな音が弾けた。
「うわっ、眩しっ! 目がチカチカするー!」
「あはは、成功! ダメージがない分、これならMPの消費も少なくて済むみたい」
私は得意げに笑った。前衛で剣を振りつつ、要所で魔法の目眩ましを入れる。魔法剣士というより、完全に相手を翻弄するトリックスターの戦い方だ。
「よしっ、これで私も少しは魔法使いっぽくなったかな」
「うんっ! それ、次の戦闘でさっそく試してみようよ!」
私たちが特訓の成果にウキウキしていると、前方からカチャリ、カチャリと聞き慣れた音が響いてきた。
緑色の甲殻、巨大な双鎌。私たちの大好きなお小遣い……もとい、カマキリ型クリーチャーだ。
「さっそく獲物のお出ましだね。あんさん、準備はいい?」
「いつでもいけるよ! 私を次のレベルへ連れてって!」
経験値まであと「2」に迫っているあんさんが、気合い十分に杖代わりの木の枝を構える。
『シャキァァッ!』
こちらに気づいたカマキリが、凶悪な鎌を振り上げて跳躍してきた。
「まずは私が前を止める!」
私はレベルアップで軽くなった体を活かし、カマキリの懐へと一気にステップを踏み込んだ。
振り下ろされる鎌をギリギリで躱し、ガラ空きになった顔面の目の前に左手を突き出す。
「練習の成果、見せてあげる……『フラッシュ』っ!」
ピカァァァッ!!
至近距離で強烈な閃光を浴びたカマキリが、『ギチィッ!?』と悲鳴を上げて完全に体勢を崩し、仰け反った。
牽制としては完璧なタイミングだ。
「今だよ、あんさん!」
「いっけえええええっ!!」
あんさんの両手から、極限まで圧縮された『ファイアーボール』が放たれる。
それは素材である双鎌には一切触れることなく、無防備に晒されたカマキリの柔らかい首の関節部分にピンポイントで直撃し、頭部だけを綺麗に吹き飛ばした。
ドサリ。
刃こぼれ一つない見事な鎌を残して、カマキリの体が床に崩れ落ちる。
完璧な連携プレイだった。そして――。
『――規定の経験値に達しました。覚醒者【あん】のレベルが上昇します』
不意に、私の時と同じ無機質なシステム音声が響き渡った。
「あ……あ……っ!」
あんさんが、何もない虚空を見つめたまま、ワナワナと震えている。
「どう? 上がった?」
「あ、上がったぁぁっ! しおんさん、私レベル2になったよ!」
あんさんが私に抱きついてきて、二人でぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「おめでとう! ステータスはどうなった?」
「MPがね、一気に倍くらいになったの! それに、Int(知力)もすっごく上がってる! これなら、強い魔法を何発も連発できるし、もっと繊細なコントロールもできるはずだよ!」
「おおー! さすが私たちのメイン火力!」
魔力に余裕ができた後衛と、撹乱魔法を手に入れた最強の前衛。
無事に『双鎌』と魔石も回収し、二人はホクホク顔だ。
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最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




