【第十九話】渋いドロップと、魔鉱石の鉱脈
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それでは、本編をお楽しみください!
「おはよう、あんさん! 今日もガッツリ稼いで美味しいもの食べようね!」
「おはよう、しおんさん! 今日は高級蜘蛛の糸、昨日よりたくさん集めたいな!」
ふかふかの布団でぐっすりと眠り、朝風呂と豪華な朝食バイキングで完璧にコンディションを整えた私たちは、意気揚々と新潟ダンジョンへ足を踏み入れた。
昨日の大豊作の記憶が新しいため、二人のモチベーションは(主に物欲的な意味で)最高潮に達している。
しかし――ダンジョン探索というものは、そう毎日上手くいくとは限らないらしい。
「ハァッ!」
私の剣が、飛びかかってきたカマキリ型クリーチャーの首を斬り飛ばす。
ドサリと倒れた死体から魔石を拾い上げ、いそいそと『双鎌』の回収に移ろうとしたのだが。
「あー……ダメだ、しおんさん。右の鎌、刃こぼれしちゃってる」
「ええっ、嘘!? あ、本当だ。昨日より甲殻が硬かったのかな……」
ため息をつきながら、不良品となった鎌を諦める。
さらに奥へ進んで蟻型クリーチャーの群れと遭遇した際も、あんさんの魔法の火力調整が僅かに強すぎたせいで、高く売れるはずの『牙』まで見事に炭化してしまった。
お目当てのクモ型クリーチャーに至っては、今日はどういうわけか全く姿を現さず、高価な蜘蛛の糸は収穫ゼロ。
「うーん……今日はなんだか、ドロップが渋いね」
「そうだね。倒した数も昨日の半分くらいだし、素材もあんまり集まらなかったや」
昼休憩でお弁当のサンドイッチを齧りながら、私たちは少しだけ肩を落とした。
昨日の爆発的な稼ぎを経験してしまったせいで、どうしても物足りなさを感じてしまうのだ。
「まあ、こういう日もあるよね。欲張っちゃダメってことかな」
「そうだね。安全第一が一番だし……ん?」
サンドイッチを飲み込んだあんさんが、ふと顔を上げて横の岩壁を見つめた。
私もつられてそちらを見る。
「しおんさん、あの壁の奥……。昨日よりも、すっごく強い『魔力』を感じない?」
「……うん。ビンビン感じる。なんか、脈打ってるみたい」
私たちが休憩ポイントに選んだ少し開けた行き止まり。
その岩肌全体から、昨日掘り当てた『魔鉱石』と同じ、青白く澄んだエネルギーの波長が溢れ出していた。
私たちは顔を見合わせ、サンドイッチの最後の一口を慌てて飲み込んだ。
「ねえ、あんさん。クリーチャーが少ないならさ」
「うん。壁からお宝を掘り出せばいいじゃない!」
落ち込んでいたテンションは一瞬でV字回復した。
私たちは即座にカマキリの双鎌(愛用のピッケル)を構え、魔力を感じる壁へと取り付いた。
「この辺りが一番強い! いくよっ、カンカンカンッ!」
「私もこっち掘るね! コンコンコンッ!」
クリーチャーがいないことをいいことに、私たちは完全に『採掘業者』と化していた。
カマキリの鎌で表面の岩を削り落とすと、中からは昨日とは比べ物にならないほど巨大で、純度の高い青白い結晶が次々と顔を出した。
「うわぁっ! しおんさん、すっごく大きいの出たよ!」
「こっちもザクザクだよ! ここは魔鉱石の鉱脈だ!」
掘れば掘るほど、美しいお宝が転がり出てくる。
気がつけば、私たちの麻袋はクリーチャーの素材ではなく、鈍く輝く魔鉱石の山でパンパンに膨れ上がっていた。
* * *
「――というわけで、今日はモンスターの素材は昨日の半分くらいしか出なかったんですけど……」
「代わりに、これを掘ってきました!」
夕刻。組合の新潟支部に帰還した私たちが、ドサリとカウンターに麻袋を乗せる。
中から雪崩のように溢れ出した『大量の魔鉱石』を見た瞬間、支部長さんは「ひゅっ」と短い悲鳴を上げて白目を剥いた。
「こ、鉱脈……!? これほどの純度と質量の魔鉱石など、前代未聞……いや、国宝級の発見ですぞぉぉぉっ!?」
腰を抜かしてカウンターの奥に消えた支部長さんを見て、私たちは「あはは」と苦笑いした。
今日はクリーチャーからのドロップが渋かったと落ち込んでいたが、結局のところ、昨日の査定額をさらに上回る莫大な報酬を叩き出すことになってしまった。
* * *
「ぷはぁぁぁっ! 労働のあとの温泉、最高ぉぉっ!」
「しおんさん、お風呂で大声出さないの。でも、本当に気持ちいいね」
その日の夜。私たちは昨日と同じ高級旅館の露天風呂で、採掘作業で酷使した肩や腕をしっかりと揉みほぐしていた。
そして、待ちに待った夕食の時間。
「今日のメインは、新潟が誇るブランド牛『村上牛』のステーキと、名物の『へぎそば』です!」
仲居さんが並べてくれた御膳には、見事なサシが入ってジュージューと音を立てる分厚いステーキと、海藻を練り込んだツルツルの冷たいお蕎麦が輝いていた。
「お、お肉がとろけるぅ〜……っ!!」
「お蕎麦もツルツルで喉越し最高! お肉の脂をさっぱりさせてくれるね!」
クリーチャー素材が少なくて一瞬落ち込んだ2日目だったが、結果的には鉱脈を引き当て、美味しい村上牛まで堪能している。
「やっぱりダンジョン遠征、最高だね!」
私たちは村上牛を頬張りながら、幸せいっぱいの笑顔でグラスのお茶を合わせるのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




