【第十八話】新潟支部の驚愕と、最高のご褒美
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
「ねえ、あんさん。袋、もうパンパンだよ」
「ほんとだ。魔石に素材に魔鉱石……これ以上は持ち歩けないかもね」
重みでちぎれそうになっている麻袋を持ち上げ、私たちは顔を見合わせた。
時計を見れば、時刻はすでに夕刻。初日の探索としては十分すぎる成果だ。
「そろそろ、一旦組合に戻ろっか。一日も終わりだし」
「賛成! 早く美味しいご飯食べたい!」
新潟ダンジョンの入り口を抜け、夕暮れの冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。
私たちが組合の新潟支部へと戻ると、ロビーで待機していた支部長さんが、満面の笑みで小走りに駆け寄ってきた。
「おお、しおん様、あん様! 無事のご帰還、何よりです! 初日の調査はいかがでしたかな?」
「はい、おかげさまで。通路が狭くて大型パーティーには不向きですけど、私たちにはすごく戦いやすい環境でした」
「それは重畳! して、魔石のほうは……おや?」
支部長さんの視線が、私たちが引きずるようにして持ってきた、はち切れんばかりの巨大な麻袋で止まった。
「あの、換金と査定をお願いしたいんですけど、いいですか?」
「も、もちろんですとも! ささ、こちらの査定カウンターへ!」
私たちはカウンターに麻袋を乗せ、中身を次々とテーブルに並べ始めた。
ゴトゴトと大量に転がり出る、蟻、クモ、カマキリの魔石。だが、それはほんの序の口だ。
「まずは、これ。カマキリ型クリーチャーの『双鎌』です。刃こぼれしないように、首だけ斬って倒しました」
「なっ……!? この硬度と鋭さ、見事な武器の素材だ……!」
「それから、蟻型クリーチャーの『牙』。これも硬かったので回収してみました」
「ひぃっ!? あの蟻の大群を相手に、部位破壊を狙う余裕があったと!?」
「あと、壁から魔力を感じたので掘ってみたら、こんなのも採れました。魔鉱石、ですよね?」
「ま、魔鉱石!? 初期調査の段階で、すでに鉱脈を掘り当てたのですか!?」
次々と飛び出す規格外の戦利品に、支部長さんと査定係の組合員さんの目がどんどん見開かれていく。
そして極めつけに、あんさんが袋の底から「よいしょ」と白い塊を取り出した。
「最後に、これです。クモ型クリーチャーの巣を、根元から切り取ってきたんですけど……」
「…………ッ!!?」
絹のように滑らかで、信じられないほど軽い純白の糸の束を見た瞬間。
支部長さんは文字通り、ひっくり返りそうになってカウンターにすがりついた。
「こ、こ、高級蜘蛛の糸……!! 防具の素材として各機関が血眼になって探している、あの超希少アイテムじゃないですか!! い、一体どうやってこんな無傷で!?」
「ええと、火で焼くともったいないって気づいたので、さっきのカマキリの鎌でスパッと……」
私が答えると、支部長さんは天を仰ぎ、ワナワナと震える手で顔を覆った。
「たった二人で……初日の数時間で、これほどの良質な素材を大量に……。名古屋のサイクロプス討伐は聞いておりましたが、お二人は……ハンターとしても規格外すぎる……」
もはや畏怖を通り越して、拝まれそうな勢いだった。
結局、これらの超希少素材と魔石には、私たちの想像を絶する莫大な買取額が提示された。出張費がタダな上に、とんでもない臨時収入。笑いが止まらないとはまさにこのことだ。
* * *
「ふはぁぁぁ〜〜……っ!」
「極楽、極楽ぅ〜……」
その日の夜。
組合が手配してくれた高級温泉旅館の露天風呂で、私とあんさんは足を思い切り伸ばしていた。
日本海の波音を聞きながら浸かる、源泉掛け流しの温泉。ダンジョンで掻いた汗も、筋肉の疲労も、すべてが湯の中へと心地よく溶けていく。
「新潟、最高だねぇ……」
「うん。でも、本当のお楽しみはこれからだよ、しおんさん」
温泉から上がった私たちを待っていたのは、部屋に運ばれてきた豪華絢爛な夕食だった。
脂の乗った「のどぐろの塩焼き」、新鮮な「カニの刺身」、ツヤツヤと輝く「新潟県産コシヒカリ」、そして彩り豊かな海の幸の数々。
「「いただきまーす!!」」
二人で手を合わせ、贅沢な海の幸を口いっぱいに頬張る。
「んんんっ! カニ、甘いっ! とろける!」
「お米もすっごく美味しい! いくらでも食べられちゃうよ!」
美味しいご飯を食べ、温泉に浸かり、ふかふかのお布団で眠る。
名古屋での居心地の悪さを忘れ、ただ純粋にダンジョン攻略を楽しんだ最高の一日。
「ねえ、しおんさん」
「んー?」
「私、ダンジョン遠征、だーいすき!」
「ふふっ、私も!」
お腹いっぱいになった私たちは、顔を見合わせて幸せいっぱいに笑い合った。
明日はどんな素材とお宝が待っているのだろうか。私たちの痛快な新潟出張は、まだ始まったばかりだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




