【第十七話】アニメの知識と、最高級の糸
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それでは、本編をお楽しみください!
青白い魔鉱石という思わぬお宝をゲットし、私たちはホクホク顔でさらに新潟ダンジョンの奥へと進んでいた。
しばらく行くと、再び前方の通路が白い網で完全に塞がれている場所に出た。
「あ、また蜘蛛の巣だね。今度は私に任せて!」
あんさんが得意げに一歩前に出て、右の掌に『ファイアーボール』の魔力を練り上げ始める。
前回と同じように一息に焼き払おうとした、その瞬間だった。
私の中に電撃的な閃き――あるいは、長年培ってきたファンタジーアニメの知識が駆け巡った。
「ストーップ!! 待って、あんさん!」
「えっ!? ど、どうしたの?」
私はあんさんの手をガシッと掴んで魔法を止めさせると、真剣な顔で蜘蛛の巣を指さした。
「よく考えてみて。アニメとかラノベだと、ダンジョンにいる蜘蛛の糸って……」
「蜘蛛の糸って……?」
「すっごく軽くて刃物も通さない防具の素材になる、めちゃくちゃ高価な超高級アイテムじゃない!?」
「…………あっ!!」
あんさんが、今日一番の大きな声を出して目を見開いた。
「そ、そういえばそうだよ! 『ミスリルより軽くて頑丈』とか言われる定番の激レア素材じゃないのこれ!?」
「そう! それを私たち、さっき『邪魔だから』って跡形もなく丸焦げにしちゃったのよ!」
「あああああ! なんてもったいないことをっ……!!」
出張費タダで喜んでいたはずの私たちが、頭を抱えてしゃがみ込む。
蟻の牙を焦がした時以上のショックだった。あの一網打尽にした炎の中に、一体どれだけのお札(束)が消えていったのだろうか。
「……反省は後よ、あんさん。目の前のこの糸は、絶対に無傷で持ち帰るわよ」
「うんっ! でも、どうやって回収するの? すごくネバネバしてて、剣で斬ったら絡みついちゃいそうだけど」
あんさんの疑問に、私はニヤリと笑って腰の袋をポンと叩いた。
「ふふん、私たちにはこの『カマキリの双鎌』があるじゃない」
「あっ、なるほど! あれだけ鋭ければ、絡みつく前にスパッと切れるかも!」
私は袋から緑色に輝くカマキリの鎌を取り出すと、蜘蛛の巣の端、壁に接着している根元の部分を狙って慎重に鎌を振るった。
スパンッ!という小気味よい音と共に、強靭なはずの糸が綺麗に切断される。やはりこの鎌、とんでもない切れ味だ。
「よしよし、この調子で根元から綺麗に……」
シュルルルルッ!
私が採取に夢中になっていると、巣を荒らされたことに激怒した家主――巨大なクモ型クリーチャーが、天井の暗がりから音もなく急降下してきた。
「しおんさん、上!」
「分かってる!」
私は慌てず鎌を左手に持ち替え、右手で抜剣する。
空中で牙を剥き出しにして襲いかかってくる巨大グモに対し、下から突き上げるように剣を一閃した。
「ハァッ!」
『ギチィッ!?』
クモは真っ二つに両断され、緑色の体液を撒き散らしながら床に転がった。
今回はあんさんの魔法の出番すらない、完璧な秒殺だった。
「ふう。やっぱり通路が狭いから、上からの奇襲さえ気をつければ全然怖くないね」
「しおんさん、強すぎ……。すっかりハンターの顔になってるよ」
あんさんが呆れたように笑いながら駆け寄ってくる。
私たちは倒したクモから魔石を回収し、壁から綺麗に切り離した「最高級の蜘蛛の糸」を、丸めて丁寧に麻袋の奥へと押し込んだ。
信じられないほど軽く、そして絹のように滑らかな手触り。間違いなく、ただの糸ではない。
「ふふふ……蟻の牙に、カマキリの鎌、魔鉱石に、高級蜘蛛の糸……」
「しおんさん、顔、顔! 悪い顔になってるよ!」
「だって、これ全部持ち帰ったら、組合の支部長さんひっくり返っちゃうかもしれないよ?」
私たちは顔を見合わせて、思わず「あははっ」と大きな声で笑い合った。
もはや恐怖など微塵もない。新潟のダンジョンは、私とあんさんにとって、お宝がザクザク手に入る最高のテーマパークになっていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




