【第十六話】魔力の波長と、壁に眠る宝
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それでは、本編をお楽しみください!
新潟ダンジョンの狭い通路は、完全に私たちの独壇場となっていた。
「あんさん、前から蟻の群れ!」
「任せて! 牙を残すように、少し火力絞るね……『ファイアーボール』っ!」
ドムッ!というくぐもった爆発音が通路に響き、蟻型クリーチャーの群れが一掃される。
道を塞ぐクモ型クリーチャーの巣は遠距離から魔法で焼き払い、厄介な双鎌を持つカマキリ型が現れた時は、私が前で刃を受け止め、あんさんの魔法で崩して綺麗な鎌を回収する。
「よしよしっ。蟻の牙も、カマキリの鎌も大漁だね!」
「うんっ! 魔石もいっぱいだし、これでお寿司にカニも追加できちゃうかも!」
私たちはすっかり『素材回収のプロ』と化していた。
戦利品でずっしりと重くなった麻袋を抱え、ホクホク顔でさらに奥へと進んでいた時のことだ。
ふと、薄暗い岩肌の通路を歩いていた私の足が止まった。
「……ん?」
「どうしたの、しおんさん。敵?」
「ううん、違うの。なんか……あの壁のあたりから、不思議な感じがする」
私は通路の右側の壁を指さした。
見た目はただのゴツゴツとした岩壁だ。だが、そこから微かに『圧』のようなものを感じるのだ。
あんさんも不思議そうに壁に近づき、じっと目を凝らした。
「あ……ほんとだ。なんていうか、私が『ファイアーボール』を撃つ時に練り上げてるエネルギー……『魔力』と同じようなものが、ここから流れてきてる気がする」
「だよね? 私もそう思った」
魔法を使えるようになったことで、私たちの感覚は無意識のうちに研ぎ澄まされていたらしい。
私たちは顔を見合わせ、まるで吸い寄せられるようにその岩壁に触れた。
ヘッドライトの明かりを近づけてよく見てみると、普通の岩に混じって、僅かに青白く透き通った結晶のようなものが露出している。
「ねえ、あんさん。魔力を帯びた鉱石って……もしかして」
「アニメやゲームのお約束……『魔鉱石』じゃない!?」
二人の声が重なった。
クリーチャーの魔石とは違う、天然の魔法エネルギーを宿した鉱石。
こんなもの、ダンジョンの研究を進めている政府や企業が喉から手が出るほど欲しがるに決まっている。
「……掘ろう」
「うん、掘ろう」
一切の迷いはなかった。
私たちは即座に麻袋を下ろし、採取の準備に取り掛かる。
「でも、素手じゃ無理だし、剣で岩を叩いたら刃こぼれしちゃうよ?」
「大丈夫、私たちにはさっき手に入れた『最強のピッケル』があるじゃない」
私はニヤリと笑い、袋の中から先ほど仕留めたカマキリの『鎌』を取り出した。
人間の骨すら断ち切る、あの硬くて鋭い刃。岩を穿つには十分すぎる。
「なるほど! しおんさん、頭いい!」
「でしょ? それじゃあ、傷つけないように周りの岩から削っていくよ」
カチッ、カンッ!
カマキリの鎌を使って岩壁を叩くと、予想通り小気味よい音を立てて岩が崩れていく。
二人で交代しながらカンカンと壁を掘り進めること数分。
ついに、ゴロンッ!という音と共に、拳ほどの大きさがある美しい青白い結晶が足元に転がり落ちた。
「やったぁぁっ! 採れたよ!」
「すごい、すごいっ! すっごく綺麗な石!」
手のひらに乗せると、微かな熱と魔力の波動がじんわりと伝わってくる。
間違いなく、一級品のお宝だ。
「これ、他の壁にもまだ埋まってるかも。魔力を探りながら進めば、もっと見つかるんじゃない?」
「うんっ! モンスターの素材に魔鉱石まで……新潟ダンジョン、最高だね!」
出張費は組合持ち。そして、掘れば掘るほど出てくるお宝の山。
私たちは「魔鉱石の採掘」という新たな楽しみ(と臨時収入)を見つけ、鼻歌交じりに新潟ダンジョンのさらに奥深くへと足を進めていくのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




