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『ダンジョン発生からまだ数日ですが、ファンタジー好きの素人女子が最強パーティーになってしまった件』  作者: さらん


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【第十五話】素材の価値と、双鎌の狩人

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


黒焦げになった蟻型クリーチャーの群れから、小さな魔石を回収していた時のことだ。

私はふと、炭化した蟻の頭部を見て、ある重大な事実に気がついてしまった。


「あ……。ねえ、あんさん。私、ちょっと勿体ないことしちゃったかもしれない」

「えっ、なに? 取りこぼしがあった?」

「ううん。この蟻のモンスターって、あのアゴ……牙の部分、すごく硬そうだったよね。あれって、もしかして短剣とかの武器の素材として、組合で高く売れたんじゃないかな?」


私の言葉に、あんさんがポンッと手を打って目を見開いた。


「あっ……!! たしかに! ゲームとかでも、そういう部位破壊の素材って高く売れるよね! 私たち、全部丸焦げにして魔石しか取らなかった……!」

「でしょ? スライムの死体の時は気にしてたのに、虫だからって完全に失念してたよ」


二人して、炭化してボロボロになった蟻の残骸を見つめてため息をつく。

出張費がタダだからといって、稼げるチャンスを逃す手はないのだ。


「次からは、使えそうな部位があるモンスターは、なるべく綺麗に倒そうね」

「うんっ! よーし、お小遣いアップのために頑張ろう!」


気を取り直して、私たちはさらにダンジョンの奥へと進んでいった。

相変わらず横幅の狭い通路が続く。すると、前方からまたカサカサという音が聞こえてきた。


「また虫かな。今度は牙を残すように――」


私が剣を構えながら角を曲がった、その時だった。


『シャアァァァッ!』

「うわっ!?」


空気を裂くような鋭い音と共に、私の鼻先スレスレを「刃物」のようなものが通過した。

咄嗟に後ろへ飛び退いて距離を取る。ヘッドライトの明かりが照らし出したのは、先ほどの蟻よりもさらに一回り大きい――大型犬ほどのサイズがある、緑色の甲殻を持ったカマキリ型のクリーチャーだった。


「カマキリ……!」

「しおんさん、あれ見て! 前足!」


あんさんの言う通り、そのカマキリ型クリーチャーの最大の特徴は、両腕に備わった巨大な二つの「鎌」だった。

ギラリと鈍い光を反射するその刃は、人間の骨など容易く断ち切るであろう正真正銘の凶器だ。

カチャリ、カチャリと鎌を打ち鳴らしながら、カマキリが距離を詰めてくる。


殺傷能力の高い前衛型のクリーチャー。普通なら恐怖で足がすくむ場面だ。

だが、今の私たちの頭に浮かんだのは、全く別の感情だった。


「あんさん……あの鎌、傷つけずに持ち帰ったら、絶対に良質な武器の素材になるよね」

「間違いないよ、しおんさん! すっごく高く売れそう!」

「さっきの蟻の牙の分まで、ここで取り返そう!」


恐怖よりも物欲。私たちは完全に『素材狙いのハンター』の顔になっていた。


『シャキァァッ!』


カマキリが跳躍し、凶悪な双鎌を上段から振り下ろしてくる。


「ハァッ!」


私は剣を横に寝かせてそれを受け止めた。

ガキィィィンッ!!


「くっ……重っ!」


火花が散り、凄まじい衝撃が腕に走る。狭い通路のせいで、横に避けるスペースがない。

力負けして押し込まれそうになったその瞬間、私の背後からあんさんの声が飛んだ。


「しおんさん、ちょっとだけ押し返して!」


私は全身のバネを使って、カマキリの鎌を弾き返した。カマキリの体勢がわずかに上へ浮く。


「いっけええっ!」


あんさんの放った『ファイアーボール』が、私の肩越しを猛スピードで通り抜けた。

それは素材である「鎌」を傷つけないよう、見事にコントロールされ――カマキリの柔らかい腹部へとピンポイントで直撃した。


『ギシャアアアアッ!?』

「ナイスコントロール!」


爆炎に腹を焼かれ、カマキリが大きく仰け反る。

その決定的な隙を、私が逃すはずがない。


「これで……いただきっ!」


私は踏み込みと共に剣を一閃。

素材である鎌には一切傷をつけず、カマキリの細い首だけを正確に斬り飛ばした。

ドサリ、と音を立ててカマキリの体が崩れ落ちる。

私たちはすぐに駆け寄り、戦利品の確認を行った。そこには、魔石と共に、一切の刃こぼれがない見事な二振りの「鎌」が残されていた。


「やったぁ! すっごく立派な鎌だよ!」

「これ、短剣の代わりにそのまま武器としても使えそうなくらい鋭いね。組合の人、絶対に驚くよ!」


綺麗な素材をゲットできた私たちは、ホクホク顔で鎌と魔石を袋に回収する。


「よしっ、この調子でどんどん狩って、豪華な海鮮ディナーと温泉を目指そう!」

「おーっ!」


新潟の狭いダンジョンは、今の私たちにとって、お宝が眠る最高の狩場になりつつあった。


最後までお読みいただきありがとうございます。


最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。


ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。

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