【第十四話】新潟ダンジョンと虫の群れ
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それでは、本編をお楽しみください!
新潟駅に降り立った私たちは、日本海の冷たい風に少しだけ身を縮ませた。
「お寿司、のどぐろ、温泉……!」
「あんさん、よだれ出てるよ。まずはしっかりお仕事(ダンジョン攻略)しないとね」
組合が手配してくれたハイヤーで新潟のゲートへと向かい、私たちは早速ダンジョン内部へと足を踏み入れた。
中は、支部長さんの事前情報通りだった。
「うわぁ……本当に狭いね」
名古屋のダンジョンが広い洞窟や炭鉱跡だとしたら、ここはまるで地下水脈か、自然の亀裂のようだ。横幅は大人二人が並んで歩くのがやっとで、天井も低い。
「確かにこれじゃ、6人のフルパーティーだと身動きが取れないね。前衛が邪魔で後衛の魔法も撃ちにくいし、避けるスペースもないもん」
「でも、私たちには関係ないね」
私とあんさんは顔を見合わせて笑った。
基本が「前衛一人、後衛一人」の私たちにとって、この狭さは敵に回り込まれる心配がない分、戦いやすい環境ですらあった。
私たちはペースを落とすことなく、どんどん奥へと進んでいく。
新しいダンジョンということで少し警戒していたが、出現するクリーチャーは名古屋とは毛色が違っていた。
「しおんさん、前! なんか糸みたいなのが張ってある!」
「うわ、ほんとだ。通路を完全に塞いでるね」
ヘッドライトの明かりが照らし出したのは、通路を覆い尽くすほどの巨大な蜘蛛の巣だった。
そしてその奥には、犬ほどの大きさがある不気味なクモ型クリーチャーが、獲物を待ち構えるようにこちらをギョロリと睨んでいる。
「剣で斬ったら、ネバネバの糸が絡みついて厄介そう。あんさん、お願いできる?」
「まかせて! ああいうのは、燃やしちゃうのが一番だよね」
あんさんがスッと前に出て、手のひらを向ける。
「『ファイアーボール』!」
狭い通路を考慮して威力を抑えた炎の玉が、蜘蛛の巣に直撃する。
ジュワァァッ!という音と共に、乾燥した糸はあっという間に燃え広がり、奥にいたクモ型クリーチャーも巻き込んで黒焦げになった。
「ナイス! 相性バッチリだね」
「うん! これなら楽勝――」
あんさんが言いかけた、その時だった。
カサカサカサカサッ……!
床を、壁を、天井を這い回るような、無数の不快な足音が通路の奥から響いてきた。
「え、なにこれ。すっごく嫌な音がするんだけど」
顔を引き攣らせる私の視界に飛び込んできたのは、黒光りする硬そうな甲殻を持った、小型犬サイズの蟻型クリーチャーの群れだった。
一匹一匹は小さいが、とにかく数が多い。ざっと数えても20匹以上が、狭い通路を黒く埋め尽くすように押し寄せてくる。
「うわぁっ!? ちょっと気持ち悪いっ!」
あんさんが悲鳴を上げる。
「あんさん、下がって! 魔法の準備!」
私は前へ飛び出し、迫り来る蟻の群れの先頭を剣で薙ぎ払った。
ガァンッ!と硬い手応え。甲殻はそこそこ硬いが、斬れないことはない。ただ、後ろから次々と押し寄せてくるため、少しでも手数を減らせば数の暴力で押し潰されてしまう。
「通路が狭いから、一方向にしか来ないのは助かるけど……数が多いわね!」
群れを押し留めるように剣を振るいながら、後ろに叫ぶ。
「あんさん、貫通力のある魔法って撃てる!?」
「やってみる! しおんさん、ちょっとだけしゃがんで!」
私は即座に姿勢を低くする。
直後、私の頭上を熱線のように圧縮された特大の『ファイアーボール』が駆け抜けた。
ゴォォォォォッ!!
狭い通路を大砲のように一直線に駆け抜けた炎は、密集していた蟻型クリーチャーの群れを一網打尽に焼き払った。
「ふぅ……。すごい、あんさん。魔法のコントロールも上手くなってる」
「しおんさんが前でガッチリ止めてくれたからだよ。それにしても、虫ばっかりでちょっと嫌だなぁ」
私たちは黒焦げになった虫たちの残骸から、小さな魔石をチマチマと拾い集めた。
一つ一つは小さくても、これだけ数がいればチリツモでそこそこの額になるはずだ。名古屋のようにサイクロプスと鉢合わせするような危険もない。
「よしっ。この調子でどんどん狩って、早く温泉に行こっか!」
「うん! 美味しい海鮮ディナーが私たちを待ってるよー!」
名古屋での過剰な注目から解放され、私たちは修学旅行のようなテンションで、新潟ダンジョンの奥へと進んでいくのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




