【第一話】初陣と癒しの歌声
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それでは、本編をお楽しみください!
「任せてっ!」
薄暗い土のトンネルに、私の声が響く。踏み込みと同時に、レンタルした重い鉄の剣を振り抜いた。
バシュッ! という鈍い音と共に、最後のゴブリンの体が両断される。
「きゃーっ! やった、やったぁーッ!」
あんさんの歓声があがり、私たちの初めての戦闘は幕を閉じた。
武器は圧倒的に不足しているらしく、組合で借りられたのは無骨な剣と短剣だけ。3匹のゴブリンのうち、武器を持っていたのは1匹だけだったとはいえ、無傷で初戦を飾れたのは素直に嬉しい。
「なんだか、ゴブリンを目の前にして武器を構えたら、自然と戦い方が分かった気がします」
私が問うと、あんさんはキョトンと首を傾げた。
「え? 私には分からなかったわ。もう無我夢中で、この剣を振り回すしかできなくて……。しおんさんは、なにか分かったの?」
「あ、あはは。なんかそんな気がしただけかも。私も必死でしたから」
組合員に言われた通り、ゴブリンの死体から魔石を回収する。魔石3個と短剣1本。順調な滑り出しだ。
「ファンタジーアニメみたいに、魔法使いの杖とかないんですかね」
「しおんさん、詳しいのね」
「えへへ、アニメの影響ですよ。こういうジャンル、見るの好きなんです」
まだ覚醒者は少ないらしく、昔の炭鉱のような薄暗い分岐路を進んでも他の人とは遭遇しない。どちらに進もうか相談していた時だった。
『ビチャッ』
「キャッ……! 熱ッ!」
不意に頭上から何かが飛んできて、あんさんの太ももに直撃した。見れば、半透明のスライムが、第2弾を吐き出そうと体を波打たせている。
(斬れば倒せる!)
直感が働き、私は床を蹴った。スライムが再び粘液を飛ばす前に、剣を一閃して仕留める。
すぐさまあんさんに駆け寄ると、彼女の足は酸を浴びたように酷く焼け爛れていた。
「痛っ……」
「あんさん、大丈夫!? 歩けますか?」
「ごめん、結構痛いみたい。少しだけ休憩させて……」
支給された傷薬なんてない。そもそもスライムの毒に効く薬があるのかも分からない。
焦る頭に、ふと『ギフト』の存在がよぎった。
(えーと、名前をつけて、宣言。それからコーラス……)
ファンタジーの世界で、傷を癒す魔法の言葉といえば決まっている。
「『ヒール』」
そして私は、そっと口ずさみ始めた。
「ラーララーラー……」
我ながら、こんなので効果があるのかと不安になる。事実、あんさんもポカーンと私を見つめていた。
だが、奇跡は起きた。
シュウーッ、という音と共に、あんさんの足の火傷がみるみる小さくなり、最後には綺麗に消え去ったのだ。
「ど、どう? まだ痛む?」
「…………」
引かれてしまっただろうか。あんさんは目を丸くしたまま固まっている。
「ねえっ、なに今のっ!? 突然歌ったと思ったら、急に足が治って……一体なにをしたのっ!?」
「えーと、ごめんなさい。私にもよく分からないの。余計なことしちゃった?」
あんさんはハッとして、落ち着きを取り戻した。
「ううん! 驚いちゃってごめんなさい。こんな急に足が治るなんて思ってなかったから……!」
私は思い切って、自分のギフトについて打ち明けた。あんさんにはギフトはおろか、ステータス画面すら出ていないらしい。適当に名前を入れただけで覚醒者として認められたのだという。
話し合いの結果、私のギフトについては二人だけの秘密にしておくことに決めた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




