【第零話】非日常の幕開け
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それでは、本編をお楽しみください!
ピッ、ヴィーン。
無機質な電子音が脳内に響き、虚空に半透明のウィンドウが浮かび上がった。
[ステータス]
Rank:B
Str:131
Def:89
Agr:157
Int:254
ギフト→
「え、なにこれ? ステータス?」
手を伸ばしても触れられないそれは、まるでゲームの画面だった。困惑しつつも、視線で『ギフト』の矢印を追うと、ウィンドウが切り替わる。
Skill:コーラス
Exp:0/40
説明:魔力をコーラスにのせることで、周囲に一定の効果を与える。
使用方法:イメージして命名しなくては使えない。名前を宣言してコーラスすることにより、効果を発動することができる。
「なんなのかしらね、これ……」
とりあえず閉じるを選択すると、『ニックネームを入力してください』という文字が現れた。なんでもいいのだろうか。私は少し考えてから、短く入力する。
『しおん』
『登録が完了しました。覚醒者【しおん】の健闘を祈ります』
システム音声が再び脳内に響き、ウィンドウはふっと掻き消えた。
ぽかんと立ち尽くす私の耳に、つけっぱなしになっていたテレビから緊迫したアナウンサーの声が飛び込んできた。
『――繰り返します。本日未明、東京、名古屋、京都の主要都市に突如出現した謎の巨大な建造物、通称「ゲート」について、政府は非常事態宣言を発令しました。先ほど、一部の民間人がゲートの内部へと吸い込まれるように消失したという未確認情報が――』
画面には、見慣れた名古屋の中心部にそびえ立つ、漆黒の渦巻く「入口」が映し出されていた。
一部の人間しか入れない謎の入口。そして、突如自分の目の前に現れたステータスと『ギフト』。私、これに入れるってこと……?
ゴクリと唾を飲み込む。心臓が少しだけ早鐘を打っていた。ギフトを試そうかとも思ったが、急に言われても何をどうしていいか分からず、諦めることにした。
翌日からのニュースは、その話題で持ちきりだった。ゲートの中に入れるのは『覚醒者』と呼ばれる人間だけ。動画配信者のアイン氏によるダンジョン内部の実況動画も瞬く間にバズり、世間は熱狂に包まれた。
中には異形のクリーチャーが存在するが、それらが落とす素材やエネルギーは産業革命以上の価値があるという。政府はすぐさま、覚醒者に向けてダンジョンへの挑戦者を大々的に募集し始めた。
私にも、資格はある。けれど、得体の知れないバケモノと戦うなんて、やっぱり少し怖い。
どうするべきか悩んでいたある日、ふいに声を掛けられた。
「しおんさん」
ビクッと肩を揺らして振り返る。そこにいた同年代くらいの女性の頭上には、名札のように半透明の文字で『あん』と浮かんでいた。
「しおんさん? あなた、『覚醒者』ですね。一緒にダンジョンに挑戦してみませんか?」
「どうして私の名前を……あ、あんさんも、覚醒者なんですね」
彼女もまた、私の頭上を見つめている。
「ええ。ダンジョンに興味はあるんですけど、やっぱり少し怖くて。誰かと一緒なら、少しは怖くないかもって」
「分かりますぅ。私も少し怖くて悩んでいたんですよぉ」
「それなら、一緒に行ってみませんか? 名古屋のゲートなら、そんなに遠くないですし」
不安そうに、けれど微かな期待を込めて微笑む彼女を見て、私の心は決まった。
一人じゃないなら、きっと大丈夫。私たちは翌日、一緒にダンジョンへ潜る約束を交わした。
(あ、ギフトのこと、聞いてみればよかった。……でも、ダンジョンに行けばきっと分かるわよね。それまでは黙っておこう)
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近流行りの「現代ダンジョンもの」ですが、すでにギルドやルールが整備された数年後の世界が多いなと思い、あえて「誰も何も分からない初日(黎明期)」を書いてみました。
ファンタジー知識ゼロの大人たちが右往左往する中、アニメ好きの女子たちがテンプレ知識だけでうっかり無双してしまう……そんな手探り感とすれ違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。




