↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第3章:推しと世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/71

3-22:セブリオン・マテリアとモル

 マテリア国王セブリオン・マテリアと、たった一人の従者モル。酸の雨を防ぐ魔天蓋(まてんがい)の下で、二人は向かい合った。


 ふと、モルの視線が足元に向いた。モルの指が、地に落ちた何かを拾い上げる――契りの紐だ。暁光(ぎょうこう)の巫女の攻撃で切れてしまった、私とセブの魂を繋ぐ紐。

 モルは拾い上げたそれを優しく拭い、丁寧に泥を落とした。


「陛下、お手を」


 言われるがまま、セブが左手を差し出す。モルはそこに契りの紐を結び直していく。


「……一人だけだ」


 紐を結ぶモルの手元を見つめながら、セブが言った。


「国のために力を捧げ続ける木偶(でく)に過ぎなかった俺を、それでも王として認めてほしかった。たった一人でよかった」


 モルの手が契りの紐を結び終える。


「その一人が、お前であってほしかった」


 紐を結び終え、離れようとするモルの手を、セブが取った。


「モル」


 反射的にモルの手がびくりと震える。セブも握った手の違和感に気づいた。


「お前、この手……」


 いたわるように柔らかく触れるセブの手を、モルは振りほどかなかった。


「陛下に飛ばされた後、私は自室で目を覚ましました。ですがすぐに、そこがマテリア城ではないと気づきました。いつもより暗い空と、窓を打つ雨音で」


 契りを解消するって言われたモルが、怒ってセブに掴みかかった後。あのときモルはここに飛ばされてたんだ。


「私は窓を開け、この手を酸の雨に浸しました。この手は、陛下をお守りするためのものです。だから、あなたにもう一度出逢うまでは、二度と剣を握ることのないように」


 モルはそこで一度言葉を止め、また話し始めた。


「その雨が、止んだのです」


 セブの目がわずかに見開かれる。


「窓の外に、魔天蓋が広がっていました。夜毎、窓から何度も見上げた魔天蓋が、陛下の魔力を宿し、ぼんやりと紫の光を帯びて」


 懐かしむように、思い出しながら語るように、モルはゆっくりと言葉を紡ぐ。


「蝶だったころ、遠くからその輝きを眺めて、きれいだと思っていました。あなたが力を奪われているとも知らずに」


 私の方からモルの表情は見えない。けどたぶん、銀色の瞳がまっすぐセブを見てる。


「陛下。私は何も奪いません。私に宿る力は全てお返しします。それでももし、もし望んでくださるなら……」


 言葉を詰まらせ俯いたモルに代わって、セブが口を開く。


「モル。きっと俺は、二度とお前を自由にしてやれねぇ。俺の我が儘でお前を一生縛りつけることになる。それでも、」


 ――セブが、モルに跪いた。


「俺の傍にいたいか?」


 王子たちも巫女も驚いたと思う。私も驚いてる。

 でも、一番驚いたのはきっとモルだ。


「……顔をお上げください」


 その声は、少し震えていた。


「マテリア国王セブリオン・マテリア陛下。私の忠誠は、あなただけのものです。これまでも、この先も、永遠に」


 モルは、セブと視線を合わせるように跪いた。それから左手を、自分の手を取るセブの手に、そっと下から包み込むように被せた。


「これからもあなたのしもべでいさせてください、我が君。おれは、ずっとあなたのそばにいたい」


 モルの言葉を聞いてセブが顔をあげる。その表情がみるみるうちにほころんでいって、今にも泣きそうな声で、モル、って呼んでる。


 見届けちゃった……いつの間にか涙出てた。うれしい。これ以上うれしいこと、無いかもしれない。

 二人が、ずっと一緒にいることを選べた。この世界に負けなかった。


 あとは、私に任せて。この世界を覆う黒雲を、慈雨(じう)の巫女の力で浄化する。

 こんなに幸せそうな二人がいるんだ。今なら絶対何だってできる。

 だって私はセブモルのオタクだから。


 どうしたらいいのかわかんないけど、とにかく祈ってみるか。黒雲が晴れるように、私の萌えの全てを込めて。


 涙を拭って、目を固くつぶって、胸の前で手を組んで、私は全力で祈りを捧げた。さっきと同じように私の全身が発光する。

 そしてその光は、すべてセブに注がれていった。


「ゆ、由紀?」


 セブの戸惑う声が聞こえて、私は恐る恐る目を開けた。何か眩しい光が全部セブの方に送られていってる。

 ねえ待って? 待って待って違うそっちじゃない! 上! 空!

 何度必死に願っても、私の力はセブの方にいってしまう。


「や、待っ、違くて、これはその、黒雲、黒雲にね、送りたいんだけど!?」


 涙目で言い訳を並べ立ててみたけど、これ、どうしたらいいんだろう? せっかくセブモルのおかげで萌えが大爆発してるのに、この力を黒雲に送れないなんて。


「いや、これでいい」


 セブがモルの手を取ったまま立ち上がった。


「モル」


 セブの呼びかけに、モルも立ち上がり答える。


「お供いたします、我が君」


 セブが魔剣を大地から召喚し、振るった。その一撃が魔天蓋を貫き、風穴を開ける。降り注ぐ雨から、モルの守護の術が主とモル自身と、私を守る。


「由紀、お前も来い」


 セブが私を呼んでくれた。セブとモルが、二人揃って私に手を伸ばしてる。

 ただのいちオタクがこんなところに招かれるなんて、冷静に考えたら申し訳なさすぎる。けど、私の力でセブの魔力を回復する以上、ついていくのが最善。

 私は駆け寄って、二人の手を取った。


「……っつーわけで、ちょいと世界救ってくるわ」


 セブが巫女と王子たちに軽く声を掛ける。


「セブ様、どうか気をつけて」

「おう」


 巫女の心配そうな声に、セブは笑顔で返した。


「んじゃ、行ってくる」


 足元に私たち三人が余裕で入る大きさの魔法陣が展開された。そのまま一気に飛び上がった私たちは、風穴を抜けて魔天蓋の上に降り立つ。


 いよいよ、世界を救うための最後の戦いが始まる。



あと2話ぐらいで終われる見込みです


次回更新は日曜!

引き続きよろしくお願いします~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。