↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第3章:推しと世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/71

3-20:最強の魔王の座

「さあ、どうしますセブ様? 二人を救うには何が必要か。もうわかりますよね?」


 暁光(ぎょうこう)の巫女がセブに問う、その声だけがぼんやりと私の耳に入ってくる。

 地面に倒れ込んだ私の背中に、巫女が手にした大鎌を突きつけているのがわかる。

 大鎌ソウルイーター。大したダメージが与えられない代わりに、あらゆる防御を無視して相手の魂に直接攻撃できる特殊武器。

 そして何故か、その攻撃はモルにだけ異様によく効く。


「何故、お前がそれを?」


 私が巫女の鎌に狙われてるせいで、セブは迂闊に動けない。


「あなたがお城を建ててくれたおかげです」


 ……ん? どういうこと? 死の谷のマテリア城は、巫女が作った罠じゃなかったの?


「……」


 セブもたぶん困惑してる。その様子に、巫女がああと声を出した。


「セブ様じゃなくて、モルがやったんですね?」


 そういって巫女が大鎌をモルの方に向けようとした。その右腕がはじかれる。


「陛下の名を……軽々しく口にするな……」


 モルが魔力を放ったんだ。っていうか巫女の言葉。あの城を作ったのがモルだって、本当に?


 巫女が苛立たしげにモルを睨んでる。


「いちいち口を出さないでください。あなたはもうしもべじゃなくなるんですから」


 そう言って巫女ははじかれた大鎌を構え直した。と同時に、モルが苦しそうな声をあげる。

 巫女が何かしたんだ。たぶんスカルから教わった術。でも今、詠唱してないよね?


「俺のしもべから離れろ」


 魔剣片手にセブが突っ込んできた。巫女が反応するのを待つことなく、叩きつけるような斬撃を繰り出す。


 ところが、速くて重いその一撃を巫女は易々と受け止めた。


「今のあたし、セブ様より強いですよ」


 巫女の大鎌が、セブの魔剣を押し返し、はじき飛ばした。

 この巫女、強すぎる。最強の魔王が体ごと吹っ飛ばされ、地面に倒れ込んでる。


「セ……ブ…………」


 セブの方へ手を伸ばしたいのに、体が言うことを聞かない。セブもモルも心配だけど、私自身もかなり危うい状態だった。


「ほら、セブ様。早くしないとあたしがユキさんにとどめ刺しちゃいますよ?」


 ハッタリだ。巫女は私を殺せない。水龍たんの鱗が二度と取れなくなっちゃうから。

 でもちょっと自信なくなってきた。普通に息が苦しいし、目も霞んできてる。頭がぼーっとして、このままだと私、本当にヤバいかも。


「ふざ……けるな」


 セブがもう一度巫女に斬りかかる。セブから何度も繰り出される攻撃を、巫女は全て完璧に防ぎきっていた。

 この巫女、なんでこんなに強いの? 今だって、斬り結びながら余裕でセブに話しかけてる。


「強くなったでしょ? モルのおかげですよ」

「どういう意味だ」

「あたしが取るはずだった祝福を横取りしてくれたから。土の精霊様が、代わりにこの力をくださったんです」


 あの骨ジジイ! なんて余計なことを! やっぱりあの場でシメとくべきだった。


「『おねがい』したんですよ。あたしが望む力を出してくれるまで。何度も、何度も、何度も」


 前言撤回。これたぶん骨ジジイは被害者だ。


「だからあなたはあたしに勝てない」


 不意を突いた巫女の大鎌が、セブの左腕を裂いた。大鎌ソウルイーターは、魂に直接干渉する。だから外傷はない。身につけたものも傷つかない、はずだった。


 私とセブの魂を結ぶ契りの紐が、ぷっつりと切れて宙を舞った。


「っ……!」


 セブの目が、思わず紐を追う。その隙を巫女は逃さない。


 ソウルイーターの赤黒い刃が、セブの胴を貫いた。契りの紐が地に落ち、その傍らに最強の魔王が膝をつく。


 セブはすぐに立ち上がろうとした。けどその動きが不自然に止まる。様子が変だ。

 よく見ると、セブの体に何かがまとわりついてる。……黒い蛇。さっきの、偽のマテリア城で巫女に使った術の反動。やっぱり大丈夫じゃなかったんだ。


「セブ様、選んでください。魂の契りを解いてモルとユキさんを助けるか、みんな仲良くここで死ぬか」


 状況的にはかなりまずい。大したダメージを与えられないはずのソウルイーターでセブが膝をついたってことは、巫女の素の攻撃力がそれだけ高いってこと。

 こんなの喰らって、モルが無事で済むはずがない。さっきまで聞こえていた苦しそうなうめき声も、今はもう聞こえてこない。どうしよう。体が動かなくて、モルの様子がわからない。


「あなたはもう最強の魔王じゃない。あとはあたしに任せて。黒雲の晴れた青空の下で、あなたも、モルも、ユキさんも、それぞれ幸せに生きていける。今のあたしなら、その道を作れる」


 言い返したい。けどもう頭が回んない。


「お前は、勘違いをしている」


 膝をついたまま、セブが巫女に反論した。


「確かにこの世界は憎い。だが、例えどれだけ世界に力を奪われようと、最強の魔王の座を譲るつもりはねぇ。これは、俺が望んだものだ。そのために、俺たちはずっと共に在る」


 きっと、すごい供給だ。もっと頭がはっきりしてるときに聞きたかった。


「わが……きみ……」


 モルがうわ言みたいに呟いたのが聞こえた。

 私にとっての供給は、巫女にとってはそうじゃない。


「……馬鹿な人」

「ああ、馬鹿だな」

「あなたから、楽にしてあげます」


 地面が溶けて、セブを足元から呑み込んでいく。巫女が構えたソウルイーターに、ありったけの魔力が注ぎ込まれていく。

 禍々しいオーラをまとったソウルイーターを、巫女は振り上げようとした。その動きが、止まる。


「動け……ない……!?」


「土の力なら、僕の出番です」


 スカルの声だ。なんでここに。


「スカル……! 余計な真似を……!」

「僕の力だけじゃありません」


「兄上以外を強化するのは非常に不本意だが、致し方あるまい」


 カインだ。待って、もしかしてこの展開。


「巫女。たとえどれほど道を踏み外そうと、私の想いが潰えることはない。しかし今は、弟にこの場を譲ろう」


 ルビーも来てる。しかも何だかほんのりあったかい。顔動かすのもしんどいからよく見えないけど、たぶんルビーは何か炎の術を使ってる。


「姫」


 ヴァニアの声だ。ヴァニアが兄弟たちを連れてきてくれたんだ。


「もう、やめよう。姫の気持ちはもう十分伝わってるよ」

「ヴァニア! 止めないで! あたしは、あたしは……!」

「魔王、あんたは早く二人を。姫は俺たちが何とかするから」

「……恩に着る」


 セブの足音が近づいてくる。


「モル、由紀!」


 しまった。セブが来てくれて安心したからか、意識飛びそう。マジで目が開かない。本当に死ぬかも。


「陛下……契りを……おれの力を由紀に……はやく……」


 だめ。そんなの絶対やだ。嫌なのに、そう伝える手段がもうない。


「モル……」


 セブが迷ってる。だめだめ絶対無理。お願いだから。私は、二人の関係性を護りたくてここまで頑張ってきたのに。


 私の意思と裏腹に、体はどんどん言うことを聞かなくなってく。セブとモルの声が少しずつ遠くなっていく。


 代わりに、目の前に映像が流れ始めた。もしかして、走馬灯ってやつ?

 この世界に来てから見るの二回目だ。銀色の蝶が、窓からふらふらと飛び込んでくる。 懐かしい。セブとモルの出会いの……いや、待って?


 走馬灯って普通、私の記憶じゃないの?



走馬灯という名の特大供給、来る――!?


次回更新は木曜!

引き続きよろしくお願いします~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。