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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第3章:推しと世界

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3-14:解釈違いです!

「間違いって、何?」


 暁光(ぎょうこう)の巫女に、私は問う。爆発しそうな感情を抑え込んで、言葉尻が震える。

 巫女はそれに気づいているのかいないのか、胸の前で祈るように手を組んで、目を伏せながら語り始めた。


「ずっと考えてたんです。セブ様がこの世界で幸せになるために、何が必要なんだろうって」


 巫女は視線を落としたまま、語り続ける。


「セブ様がモルに魔力を分け与えた。そのせいで、世界を救えなくなってしまった。あの日、銀色の蝶と出会わなければ、セブ様はこんなに苦しまなくて済んだ」


 祈るような姿勢のまま、巫女は切なげに眉を寄せてゆるゆると首を横に振っている。まるで、自分こそが悲劇のヒロインだって私に見せつけるみたいに。


「あたし、二人の出会いを止めようとしました。でも『暁光の巫女』がこの世界に現れるのは異暦611年だから、既に起きてしまったことは変えられません」


 巫女が、顔を上げる。


「だから、()()()()()()にするんです」


 真っ直ぐ私の方を見た巫女は、怖いぐらい晴れやかに微笑んでいた。


「なかったこと……?」

「セブ様の記憶からも、モルを消し去ります」


 なに言ってるの、この巫女。本気で、それがセブの幸せだって信じてるってこと?


「二人が、出会わなければよかったって? セブがモルに出会わず、欲しいって気持ちも持てないまま、マテリア王国の生贄としてずっと力を捧げ続けてればよかったって、そう言いたいわけ?」

「違います」


 噛みつくみたいに、巫女がすぐさま否定してきた。


「セブ様を救うのは、モルじゃない。ただそれだけのことです」


 ……うん。もういい。よくわかった。これ以上質問しても無駄。

 だって巫女の言ってること、完全に私、解釈違いだから。


「あのいいですか? まず救うとか救わないとかそういう話じゃないわけ。セブが蝶だったモルを見て『欲しい』って思った、それが全て。セブはモルを必要としていて、モルはセブのそばにいたいって願ってる。これ以上二人に何を求めるって言うんですか?」


「モルと出会ってしまえば、いずれ犠牲にするしかなくなります。そしてモルを犠牲にすれば、セブ様は必ず深く傷つきます。セブ様は、優しいから。それなら、セブ様を救うのがモルじゃなければいい。セブ様が、欲しいと思ったものを二度と手放さなくて済むように」


 だから! そうならなくて済むように! 頑張ってるんですけど! 今!


「セブはモルを手放さない。私が、手放させない」

「不可能です。セブ様は必ずモルを手放しますよ。この世界の魔力は有限なんですから」


 ちょっと待って。今、聞き捨てならない新情報が。


「世界の魔力が有限って、どういうこと?」

「研究テキストの中に、隠しがあるって知ってますよね?」


 知ってる。研究ステータスを上げると読めるフレーバーテキストの中には、ある特定の条件を満たさないと解放されないものがある。たとえば、追加ルートに進まないと読めない、とか。


「その中に、クリア後しか解放されないものがありました」


 巫女の言葉に、私の頭は一瞬フリーズした。


「それって」

「どう足掻いても読めないテキストです。本来なら、ですが」


 原作ゲームはクリア後の世界で遊べない。クリアデータを引き継いでまた最初から二周目を始めることはできるけど、平和になった後の世界でキャラクターを操作したりメニュー画面を出すことはできない。

 

 つまり、クリア後の世界でしか解放されないテキストは、本来なら決して読むことはできないどころか存在さえ知ることはできないものだった、はず。私も知らなかった。


 けど、今この世界は、巫女がマテリア侵攻イベントを早く起こしすぎたせいでクリア後に近い状況になってる。だから、読めてしまったんだ。

 どういう意図で本来なら読めないテキストを公式が実装したのかは知らないけど、とにかく巫女はそれを読んだ。


「何が書かれてたの?」


 私が尋ねると、巫女は淡々とその内容を語り始めた。


「この世界の魔力の総量は決まっています。生きとし生けるもの全てが限られた魔力を分け合う、それがこの世界の仕組みだったんです」


 最悪。いかにも公式が考えそうな設定だ。

 この設定と最強の魔王は、相性が悪すぎる。

 通常ルートといい追加ルートといい、本当にセブモルを苦しめる才能に満ちあふれてるよね、製作陣。


「今この世界は、マテリアの王に力が偏りすぎたせいでバランスが崩れています。それを正すための仕組みが、」

「……酸の雨」


 巫女が静かに頷いた。


慈雨(じう)の巫女が現れなかったのも、精霊たちがいなくなっちゃったのも、セブのせいってこと?」

「セブ様のせいじゃないです。恐らくはもっと、ずっと昔から」


 ですが、って巫女は言葉を続けた。


「偏った力を世界に返さない限り、酸の雨が止むことはありません」


 ……そういうことだったんだ。セブが最強の魔王である限り、モルとともに生き続ける限り、この世界に平和は訪れない。


「皮肉ですよね。あたしが何度リセットしても辿り着けなかった秘密を、あなたのおかげで見ることができたなんて」


 巫女は自嘲するみたいに笑ってる。


「セブ様は、好きで最強の魔王になったわけじゃない。だったら、何もかも手放して、自由に生きたっていいんです」


 黒装束の巫女から、溢れんばかりの聖女パワーが伝わってくる。本気でセブのことを救おうとしてるんだ。


「あんたのやりたいことはわかった」


 けどごめん、私はその道を選ばない。

 今私、すっごくムカついてるから。

 暁光の巫女にじゃない。この世界に。


 ただのオタクが公式にこんなこと言うの申し訳ない気もするけど、現代日本のセブモルのオタクたちも絶対同じ気持ちだと思うから、言います。


「この世界、解釈違いです」



タイトル回収~!


次回更新は火曜!

引き続きよろしくお願いします~!

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